平成182006)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

18−共研−5

専門分類

5

研究課題名

微細溝加工を施した鉛直平板を流れ落ちる液膜流の熱輸送特性

フリガナ

代表者氏名

アダチ タカヒロ

足立 高弘

ローマ字

ADACHI Takahiro

所属機関

秋田大学

所属部局

工学資源学部

職  名

講師

所在地

TEL

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研究目的と成果の概要

平板上を流れる薄い液膜流れでは、固体壁に接していない側では自由表面となっており容易に波が発生する。このような波動現象や液膜を介した熱輸送現象は、非線形現象の代表的な例である。自由表面での波が不安定な場合には、初めは小さな振幅の波でも時間の経過とともに振幅は大きくなり、最後には液膜が破断することがある。また、ある程度大きな有限振幅の波にはソリトンやカオスとして知られている規則的あるいは不規則的なパターンが液膜表面に現れる場合がある。工学的には、このような流れの乱れを人為的に誘起して伝熱を促進させる目的から平板上に微細加工を施すことが行われる。

本研究では、微細加工を施した平板上を流れる液膜流についてVOF(Volume of Fluid)法を用いた数値計算により数値データを集め、得られた結果の統計数理解析を行うことで、液膜流の表面物性および熱輸送特性と微細加工のピッチ等との関係を明らかにすることが目的である。

今年度も前年度に引き続き、有限差分法を基にして、HSMAC法とVolume of Fluid(VOF)法とを用いた二次元気液二相流れの数値解析コードの開発を行った。特に、前年度に課題となっていた計算プログラムの高速化に取り組んだ。本計算プログラムでは気相と液相が共存する気液二相流れを取り扱っており、気液界面が計算の進行につれて変化する移動境界値問題となっている。プログラム中で問題となっていたのは、この界面での位置決定や境界条件の設定等で複雑な条件分岐を行っており、そのことが並列化やベクトル化の阻害因子になっていた。中でも、圧力に関するポアソン方程式の反復計算で、界面での境界条件を設定する必要があり,全体の約40%の計算時間を費やしていることであった。今年度は、この部分をまず単体プログラムのレベルでチューニングを行うことを目指した。圧力の計算は、反復計算なので、この中で境界条件や位置決定等の分岐判断を行っていると計算が甚だしく遅くなることがわかった。そこで、この判断分岐を反復計算の外に出して計算速度を速める工夫を行った。さらに、統計数理研究所のスパコンは分散メモリ型のマシンが多いため、MPIを用いた並列化チューニングに取り組んでいるところである。

  今後は、MPIを用いた並列化チューニングを完成させ、いろいろなパラメータについて多くの計算結果を得ることが課題である。