平成212009)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

21−共研−4

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

文章のジャンル判別に寄与する指標としての複合動詞の研究

フリガナ

代表者氏名

ムラタ ミノリ

村田 年

ローマ字

MURATA Minori

所属機関

慶應義塾大学

所属部局

日本語・日本文化教育センター 

職  名

教授

 

 

研究目的と成果の概要

本研究の最終目標は、文章のジャンル判別に有効な指標としての文型ならびに語句が存在することを実証的に明らかにし、その成果を専門日本語教育における論述文の体系的かつ効率的な教育方法に結びつけることである。
 今年度も昨年度に引き続き複合動詞を指標として取り上げた。昨年度は、複合動詞の後項動詞となる動詞の中から41の動詞を選び、異なる7つのジャンルの文章コーパスを利用して、各ジャンルの文章における使用頻度を調査し、その使用頻度データをもとに多変量解析を用いて各ジャンルの文章に特徴的な複合動詞の後項動詞群15項目(「だす」「こむ」「かける」「きる」「あがる」「まくる」「なおす」「いる」「たつ」「あげる」「いれる」「おわる」「つくす」「つづける」)を抽出した。また、複合動詞の使用傾向の差異が文章のジャンルの判別に寄与することも実証的に明らかにした。今年度は、その41の後項動詞のうち、造語力が強い26項目を選び、上記の文章コーパス内での使用環境を調査した。その結果、論述的文章ジャンルに含まれる5つの文章資料内では「こむ」「だす」「あげる」がよく用いられていることがわかった。「こむ」は論述的文章ジャンルのみならず、小説・社説ジャンルでも多用されていた。「だす」は今回の調査で26項目中一番造語力が高く、近代小説での使用が圧倒的で、論述的資料ジャンルの中では文学論文での使用が最多で前項動詞も29種類に上った。「あげる」は論述的文章ジャンルのすべてのジャンルで「取り上げる」が用いられていた。小説・社説ジャンルでは近代小説を除いて使用頻度は低かった。さらに論述的文章における複合動詞の使用状況を調べるため、現在、理工学系学会の講演論文要旨250編を対象資料として、各項目の使用環境を調べている。