平成282016)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

28−共研−2066

分野分類

統計数理研究所内分野分類

i

主要研究分野分類

8

研究課題名

離散最適化による外来種拡散に対する被害リスク評価モデル

フリガナ

代表者氏名

ヨシモト アツシ

吉本 敦

ローマ字

Yoshimoto Atsushi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

数理・推論研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

91千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 侵略的外来種は,在来生物と競合し,様々な経済的・生態的損失を引き起こし,世界的にも多大な損失が発生している.生態学的被害については,島嶼地域を中心に様々な固有種の絶滅をもたらしている.これまで,欧米を中心に,外来種の被害を軽減するための管理について様々な研究が行われ,管理行為と外来種リスクの相互作用を捉えた最適化モデルの構築と分析による費用効率的な管理に関する政策提言が行われている.しかしながら,考慮される拡散モデルの単純さから,さらなるモデルの改良が必要不可欠となっている.
 生態学や生物学の分野では,外来生物の拡散に関して古くから数理モデルの構築が展開されてきており,外来生物の分布拡大を予測する手法は確立されてきている.例えば,外来種の拡散スピードは植生状態により異なることが知られており,異質な植生状態の空間分布は外来種の拡散パターンに影響する.このように,外来種の空間的な拡散モデルの複雑化に伴い,シミュレーションにより拡散動態は捉えられてきているものの,それらを応用した最適管理モデルの構築は未だ十分に対応しているとは言えない.また,被害量制約を考慮した最適化モデルによる外来種被害に対するリスク評価は皆無である.
 本研究では生態学・生物学の分野で用いたれている異なる拡散分布とセルオートマン法により外来種の拡散を捉え,それぞれの拡散モデルに対応できる最適化モデルの開発を目的とした.今回は拡散距離に対して指数関数的に拡散数の減少を仮定した拡散モデルを用いた.また,外来種拡散により侵略が達成される確率は外来種の累積個体数の増加に伴い確率1に漸近する単調増加関数を想定した.これらのモデルを仮定し侵略により発生する被害費用を侵略ユニットに対し係数とし被害費用最小化問題として整数計画法によりモデルの構築を行った.モデル構築に際しては対数変換によるモデルの線形化を用いた.
 次に侵略防御に対しては2つのケースを想定した.まず侵略されているユニットに対する事後防御,次に侵略されていないユニットに対する事前防御である.前者に対しては平均侵略距離の減少,後者に対しては累積個体数の減少をそれぞれモデル上に想定した.これらの仮定を用いて最適な防御を探求した結果,まず侵略の前線に対する防御策が重要になることが分かった.また前線に接するユニットに対して侵略の防御如何に関わらず侵略の確率が高いため,防御を施すこと自体非効率的であることが分かった.最後にランドスケープの非均一性をユニット毎に設定した平均侵略距離の違いにより対応した場合も同様に侵略の前線での防備が効率的であることが分かったが,必ずしも特定の防御策が有効という訳ではなく,ケースバイケースでの対応が重要になることが分かった.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Yoshimoto, A., Asante, P., Konoshima, M., Surovy, P. (2016) Integer programming approach to control invasive species spread based on cellular automaton model, Natural Resource Modeling, DOI:10.1111/nrm.12101

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

加茂 憲一

札幌医科大学

木島 真志

琉球大学

内藤 登世一

京都学園大学