平成61994)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

6−共研−59

専門分類

7

研究課題名

相同性解析に基づく全生物リボソーム蛋白種のコンパイル

フリガナ

代表者氏名

オオタカ エイコ

大鷹 英子

ローマ字

所属機関

広島大学

所属部局

原爆放射能医学研究所

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

生物界に普遍的に存在するリボソームは、生物種によって構成蛋白種数が異なり、その数は、50〜80余種にものぼる。進化的解析に供されるとき、個々の蛋白種別に扱われるのが通例であるが、リボソーム全体として所定の形態を構築するが故に全構成種を通して解析の対象とする視点が重要である。本研究では、相同性解析の各種手法に基づく相同蛋白種のコンパイル作業を継続して行うとともに、構築されたアライメントをもとに近緑生物種間でのアミノ酸置換確率行列を推定する。


前年度末以降に報告された新たなデータに対し、相同蛋白種へのコンパイルおよびアライメントの更新の作業を行なうとともに、比較的多くの生物種のデータが揃っている蛋白種に関して最尤法による分子系統学的解析を行なった結果、以下のことが明らかとなった。
(1)現時点における蛋白種はオルガネラ特異的なものを含め120種以上にわたる。それらのうちで、三大生物群に共通なもの、真核生物と古細菌に共通なもの、真核生物特異的なもの、および真正細菌特異的なものは、それぞれ32、16、28、および21種存在する。
(2)ほとんど全てのアライメントは、挿入、欠失、分子伸長等を伴なっているものの、分子のN末端からC末端にわたりほぼー対ー対応のパターンを示している。
(3)大幅な挿入、欠失、分子伸長などの変化は、主として三大生物群相互の間で見いだされる。同一群のなかでの主な変異はアミノ酸置換であるが、一部の蛋白種については、真正細菌に含めているオルガネラ由来の配列が通常の真正細菌の配列よりも大幅に分子伸長を起こしているような例が見受けられる。
(4)真核生物の進化のさまざまな段階における遺伝子重複がいくつかの蛋白種において生じている。
(5)分子系統的な解析の結果は、古細菌が単系統群をなす可能性の少ないこと、高等真核生物(動物、菌類、植物)3者の関係では動物と菌類が近い可能性の高いこと、などを示唆している。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Hashimoto,T.and Otaka,E.,The ribosomal protein species and the evolutionary
relationships among family proteins in some species,CSH Symposium on the
Ribosome Synthesis & Nucleolar Function,1994,9,29
大鷹英子,橋本哲男,石丸くるみ,Universal Code System(UCS)による全生物リボソ
ーム蛋白質の編集 その三,第17回日本分子生物学会年会,1994,12,13
Otaka,E.and Hashimoto,T.,Evolution of the ribosomal proteins:compilation,
alignments and molecular phylogenies of ribosomal protein species,An
International Conference on the Structure and Function of the Ribosome,
1995,5,21

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

前年度までの共同研究により、大腸菌を代表とする真正細菌群に存在する蛋白種、および真正細菌群には存在しない蛋白種、の全てについて、1993年7月の時点のデータでのコンパイル作業を終了し、アライメントデータベースを作成したが、新たなデータの蓄積が多量にあるため、これらを含めてのコンパイル作業を継続し逐次データベースの更新を行う。
一方、既に構築されたアライメントに基づき、三大生物群、葉緑体、および、ミトコンドリアの5群別に、各群内での明確な系統関係の仮定のもとで、アミノ酸相互置換頻度を集計しアミノ酸置換に関する遷移確率行列を推定する。さらに、各生物群間での推定確率行列の相違を検討する。データの収集と解析に関する作業を能率的に且つ混乱なく実行していくために、統計数理研究所との共同研究体制が強く望まれる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

橋本 哲男

統計数理研究所