平成182006)年度 若手短期集中型研究実施報告書

 

課題番号

18−共研−5002

専門分類

4

研究課題名

共変量情報を用いた有意抽出標本による調査の統計的補正法の開発

フリガナ

代表者氏名

マエダ タダヒコ

前田 忠彦

ローマ字

MAEDA Tadahiko

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

50千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

■研究目的
本研究では,様々な共変量情報を調査時に取得し,統計的予測手法を利用することで,有意抽出による対象者選出法で実施されたウェブ調査の偏りを補正する方法を開発し,実用化に資する方法論を研究することを目的とする。利用する統計的な枠組みは共変量調整の考え方に基づくものであり,推定された傾向スコアの推定に基づく標本の重み付けである。
本研究では,提案者が利用可能な訪問面接調査データとインターネット調査データのリソースを利用して,調整に有効な共変量情報の探索を行う。

■研究の経過
 公開された社会調査データである日本版総合社会調査「JGSS」のデータを利用した研究を行った。また同様に典型的なマーケティング調査である(ビデオリサーチ社による)ACR調査を素材とした研究をおこなった。統計的な予測手法に関する方法上のバリエーションも検討したが,本研究の範囲では比較的実装が容易なロジスティック回帰分析の利用を中心とし,適切な共変量の選択に関する研究を中心に実施した。

■研究成果
 主要な成果は星野・前田(2006)で報告された。そこでは調整に用いる共変量の選択方法に関する検討を実データに基づいて行った。
 有用な共変量の選択のためには,次のような概略4ステップを推奨できる。
[1] 個人内変動が少なく,補正対象となるウェブ調査と従来型の調査(基準となる無作為抽出による調査)の両者で継続的に利用可能であるような項目を選ぶ
[2] ウェブ調査と従来型の調査の間で差がある項目を選ぶ。
[3] 調整したい目的項目を共変量に回帰させたときの偏回帰係数の符号が同じになるものを選ぶ。複数の目的項目全体でこの条件が満たされるものを優先する。
[4] 上記を満たす共変量の組の中から,更に補正後の二乗誤差の和を減少させるように共変量を選択する。
 今後は,傾向スコアの推測モデルとしてより多様な方法を試みること,応用範囲を広げることの2点が課題である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

 次のような文献に,ウェブ調査と従来型調査間の比較に関わる問題意識,具体的な共変量の選択法に関する研究成果を報告した。

(1)前田忠彦・大隅 昇 (2006) 「自記式調査における実査方式間の比較研究 ?ウェブ調査の特徴を調べるための実験的検討?」 ESTRELA No.143 (2006年2月号), 12-19.

(2)星野崇宏・繁桝算男(2004)「傾向スコア解析法による因果効果の推定と調査データの調整について」, 行動計量学, 第31巻1号 43-61.

(3)星野崇宏・前田忠彦 (2006) 「傾向スコアを用いた補正法の有意抽出による標本調査への応用と共変量の選択法の提案」, 統計数理, 第54巻第1号, 191-206.

(4) 星野崇宏・森本栄一 (2007). 「インターネット調査の偏りを補正する方法について?傾向スコアを用いた共変量調整法?」 井上哲浩・日本マーケティング・サイエンス学会(編), 「Webマーケティングの科学?リサーチとネットワーク?」, 千倉書房.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

  なし。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

星野 崇宏

東京大学

松本 渉

統計数理研究所