平成142002)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

14−共研−2024

専門分類

4

研究課題名

個票データの開示におけるリスクの評価と官庁統計データの公開への応用

フリガナ

代表者氏名

サイ シドウ

佐井 至道

ローマ字

Shido SAI

所属機関

岡山商科大学

所属部局

商学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

11 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

標本調査によって得られた個票データのリスク評価としては,観測された標本サイズインデックスを
基に超母集団モデルを用いて母集団サイズインデックスを推定することが主流であり,より当てはまり
の良い超母集団モデルを構築することが本研究の目的の一つであった。本年度は,これまで最も当ては
まりが良いとされているピットマンモデル以外にも,当てはまりの良い逆ガウシアンポアソンモデルな
どの新しいモデルがいくつか提案された。また,これらの研究が進んだ結果,これまで提案されてきた
超母集団モデルの相互関係についても明らかになってきた。
 モデルによらない母集団サイズインデックスのノンパラメトリック最尤推定法が昨年度提案されて
いたが,官庁統計のような大きな母集団への応用には計算時間上の問題があり,この点を克服すること
も本年度の課題であった。これについては,母集団サイズインデックスに対して対数変換後に下に凸で
あるなどの適切な制約条件を置くことと,各母集団サイズインデックスのパターンに対して尤度関数を
網羅的に計算せずに,探索的な方法で最大尤度をとる母集団サイズインデックスを求めることによっ
て,標本がある程度大きいならば,数十万程度の大きさの母集団についても適用することが可能となっ
た。また制約条件の代わりに,Zipfモデルや一般化Zipfモデルの一つであるWaring-Herdan-Muller
のモデルを用いる方法についても検討が行われた。実データに対する検討の結果,計算時間上のメリッ
トは大きかったものの,モデルの当てはまりについては更なる検討が必要であった。その解決のために
は,例えばパラメータの数を増やすなどしてモデルを拡張することが必要になると思われる。これは来
年度に向けての課題である。
 また本年度は家計調査,全国消費実態調査,労働力調査の官庁統計について,本共同利用研究の参加
者で目的外使用申請を行うための準備を進め,現在は3統計とも下審査の段階である。特に家計調査と
全国消費実態調査については,1ヶ月以内に本申請を行うことが可能と思われる。本年度は目的外使用
が近く許可されることを想定して,調査事項の内で個人を特定するために利用される変数であるキー変
数の選定や,個票データを公開する際にデータに含める調査事項の優先順位について議論を行った。ま
た労働力調査の個票データの公開では,ローテーションサンプリングの情報を併せて公開することによ
りデータとしての利用価値を高めることができると考えられるが,疑似データを用いてその点に関する
検討も行った。来年度に目的外使用が許可されれば,各統計について個票データのまま公開してもプラ
イバシーの侵害が起こらないと評価される調査事項と各事項における項目の併合方法の例示を行う予
定である。
 本共同利用研究の参加者以外の意見を取り入れるために,本研究のテーマに関して科研の研究グルー
プと共同で2002年11月29,30日に統計数理研究所内でシンポジウムを開催するとともに,研
究所外で数回の研究会も開催した。また統計数理研究所の論文誌「統計数理」に個票データ開示関連の
特集を組むことが既に決定していたが,本共同利用研究の参加者も既に投稿したところである。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(論文)
・佐井至道,一般化Zipf法則を用いた母集団サイズインデックスの最尤推定,岡山商大論叢,39。
・Takemura,A.,Minimum unsafe and maximum safe sets of variables for disclosure risk assessment
of individual records in a mocridata set,Journal of the Japan Statistical Society,32,
107-117.
・Takemura,A.,Local recoding and record swapping by maximum weight matching for disclosure
control of microdata sets,Journal of Official Statistics,18,275-289.
・Fukushige,M.and Oya,K.,On the model selection criteria for demand system:Theil's minimum
entropy measure and its modification,Mathematics and Computers in Simulation,59,171-177.
・福重元嗣,戦前期におけるわが国のマクロ生産関数と金融市場の発展,国際協力論集,10,117-126。
・福重元嗣,地域通貨の発生に関する計量分析,ノンプロフィット・レビュー,2,23-34。
・Konno,T.and Fukushige,M.,The Canada-United States bilateral import demand function:Gradual
switching in long-run relationships,Applied Economics Letters,9,567-570.
・福重元嗣,宮良いずみ,公営バス事業の効率性評価,会計検査研究,26,25-43。
(学会発表)
・佐井至道,サイズインデックスのノンパラメトリック推定,統計関連学会連合大会。
・星野伸明,逆ガウシアン=ポアソン分布を利用した個票開示リスク評価,統計関連学会連合大会。
・稲葉由之,世帯類型及び家族構成に関する分析,ミクロ統計データ活用研究会研究成果結果報告会。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

稲葉 由之

小樽商科大学

打浪 清一

九州工業大学

大森 裕浩

東京大学

加納 悟

一橋大学

瀧 敦弘

広島大学

竹村 彰通

東京大学

田村 義保

統計数理研究所

福重 元嗣

大阪大学

星野 伸明

金沢大学

和合 肇

名古屋大学