平成61994)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

6−共研−36

専門分類

5

研究課題名

地盤工学における逆解析への情報量統計学の応用

フリガナ

代表者氏名

ホンジョウ ユウスケ

本城 勇介

ローマ字

所属機関

岐阜大学

所属部局

工学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

逆問題の解析は近年医療、資源探査、地球物理学等の分野で著しい発展が伸展している。これは、電気的な計測技術と、データの処理技術、また計算技術の著しい進歩と経済性の向上に負うところが大きい。
地盤工学の分野でも事情は同様であり、逆問題の研究は徐々に台頭してきている。提案者たちはこの研究を既に昭和63年度の共同研究を行っていたが、その後一名が4年間外国に滞在していたため、共同研究を提案できずにいた。今回これを再開し、より非線形性の高い地盤工学の問題(例えば地盤の変形)、またダイナミックな問題(例えば施工中の観測値による設計変更の決定)等に研究を拡張する。


地盤工学に関連した逆解析では、(1)構造物に対する外乱の単調性、(2)外乱のレベルが相当限られていること、(3)計測数・位置の限定等のため、ほとんどの問題で共線性を持ったデータが表れる。問題が不適切であると言ってもよい。この問題を克服するためには、何らかの意味で事前情報の利用が不可欠であり、問題は必然的にベーズ法により定式化される。
ここで問題となるのは、観測データと事前情報の適切な相対的な重み付きの問題である。事前情報への重みが相対的に小さいと観測データの持つ共線性を克服できず、またこの逆の場合は、貴重な観測データを無視した解析結果となってしまう。
この問題に、赤池のベーズ情報量基準(ABIC)を導入しているのが、本研究の立場である。今年度は、この方法を弾性波ジオトモグラフィーの実データ2種類、また新潟県六日町周辺の地下水のモデリングの2種類の問題に適用し、有用な知見を得ることを、目的とした。特に後者は相当に複雑な問題であり、またこの種の問題としては異例と言ってよいほど整った観測データが得られている。
これらいずれの場合にも、ABICはモデルの同定、パラメーターの推定の過程で極めて有用なツールであることを示した。
この研究ではまた情報量統計学が地盤工学の逆解析で有用であることを普及させるため、この分野の学会誌に掲載される逆問題の講座記事に、この方法の紹介を分かりやすく解説することも行った。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

本城勇介、地盤工学における逆解析:事前情報とモデルの選択、土と基礎(土質工学会誌)Vol.43, No.7 & No.8、1995年7月と8月 (印刷中)

本城ほか、弾性波ジオロモグラフィーにおける平滑化フィルターの選択、土木学会全国大会(松山)、1995年9月
本城ほか、逆解析による六日町地域地下水モデルの透水量係数分布の推定、土木学会全国大会(松山)、1995年9月

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

地盤工学の逆問題では、データ入手が物理的に地表面、限られたボーリング孔等に限られるため、観測データに偏りが生じ、重共線性が発生する場合が多い。また、同定しようとする物理的なモデルは、複雑なものが多く、パラメーター数も多い。このような制約のため、逆問題において、ベーズ的アプローチを行う必要があるが、このとき事前情報と観測情報の間の最適なトレードオフ関係を決めることが不可欠であり、このために赤池が提案している情報量統計学に基づいた事前分布の決定法が極めて有効である。このため、統計数理研究所との共同研究は不可欠である。
今年度は、この手法を従来の比較的非線形性の弱い地下水解析の問題からより非線形性の強い地盤変形の問題へ拡張を計る。また、ダイナミックな逆解析問題(工事を行いながら観測を行い、これによって設計モデルパラメーター値を推定し、設計変更を行なうような問題。地盤工学分野では拡張カルマンフィルターを応用しているものが多い)への拡張も計る予定である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

柏木 宣久

統計数理研究所