平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−65

専門分類

7

研究課題名

蛋白質の進化過程におけるアミノ酸置換確率の推定

フリガナ

代表者氏名

ハシモト テツオ

橋本 哲男

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

アミノ酸相互の置換確率(推移確率行列)を推定することは、蛋白質の進化過程を確率モデルとして記述してデータ解析を行なうのにあたり必要不可欠なものである。すなわち、蛋白質の相同性解析、分子系統樹の推定などの方法論的基礎となるものである。
本研究は、最近の新しい蓄積データをもとに、現実のアミノ酸置換の過程を良く表現する推移行列を推定することを目的とする。


蛋白質の進化過程におけるアミノ酸置換確率を推定し、相同性探査、分子系統樹の推定、などの分子進化学的解析を行う際の確率モデルとして適用することを目標に研究を行っている。
本年度は置換確率推定に至るための集計を行う準備段階として、各種保存的蛋白質の近縁種間でのアライメントを昨年度に引き続いて行った。
対象とした保存的蛋白質は、DNA dependent RNA polymerase、Elongation factor-1α、Elongation factor-2、F0F1-ATPase、V-ATPase、各種リボソーム蛋白質、heat shock protein 70、aminoacy1-tRNA synthetase、などである。これらの一次構造データを、毎週更新される遺伝情報データベースを探索することによって収集、整理する作業を継続的に行った。新しいデータが入力される毎に、真核生物、古細菌、真正細菌の三大生物群、および、葉緑体、ミトコンドリアなどのオルガネラ、のそれぞれについて、昨年度までに構築されたアライメントを更新した。
一方、葉緑体ゲノムおよび脊椎動物ミトコンドリアゲノムにコードされている各種蛋白質についても、新しいデータの入力に伴いアライメントを更新した。
三大生物群、およびオルガネラを通して存在する保存的蛋白質については、生物群内部での変異はアミノ酸置換が主であるのに対し、生物群間では大幅な挿入、欠失が生じている。現在取り扱っている蛋白質の中では、Elongation factor-1αおよび-2が他に比べて保存的であることが明らかとなり、全生物界を通しての分子系統学的解析を行うような場合には、これらの蛋白質を用いるのが適切であると考えられた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

今年度解析の対象とする蛋白質ファミリーをElongation factorおよびリボソーム蛋白質に限定し、真核生物、古細菌、真正細菌の三大生物界別に近縁種間でのアミノ酸配列のアライメントを行なう。これをもとにアミノ酸ペア間の相互置換頻度を集計する。集計方法はDayhoffら(1972,1978)に準ずる。
つぎに、このような置換行列が、異なる蛋白質同士でどの程度共通か、三大生物界の間では違いが見られるか、真核生物の中でもミトコンドリア、葉緑体などのオルガネラと核とではどのような違いがあるか、などを調査し、それらの結果を十分考慮したうえで、現実の置換過程を最も良く表現する推移行列を推定する。推定の方法については統計的な視点から検討を加える。
データの収集、整理、解析を効率よく進めるために、統計数理研究所における共同研究が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

足立 淳

オックスフォード大学

岸野 洋久

東京大学

長谷川 政美

統計数理研究所