平成31991)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

3−共研−55

専門分類

7

研究課題名

乳腺超音波検査所見、生活習慣と乳癌、乳腺症の関連性の解析

フリガナ

代表者氏名

イナバ ユタカ

稲葉 裕

ローマ字

所属機関

順天堂大学

所属部局

医学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

乳腺超音波検査による乳腺の厚さ等と乳癌のリスクの関連性については未だ十分な解明がなされていない。本研究はこれらの因子と妊娠出産歴生活習慣等の要因の関連性を分析するとともに,乳癌,および鑑別上問題となる乳腺症のリスクとの関連性を明かにすることを目的とする。


乳癌検診を受診して自記式アンケートに回答した者のうち、二次検査(触診と乳腺超音波検査もしくはマンモグラフィー)を受診して臨床的に乳腺症と診断された244例を症例、一次検査(触診)もしくは二次検査で異常なしとされた例を対照として、1:3の割合でマッチ(年齢±5歳)させて244の組を作り、これを用いて症例対照研究を行った。また、京浜地区の3施設で乳癌症例のうち自記式アンケートに回答した157例を症例とし、異常なしとされた例を対照として、1:3の割合でマッチ(年齢±5歳,婚姻歴の有無のマッチ)させて乳腺症と同様の方法で解析した。
初経年齢が早い方がまた閉経年齢が遅い方が乳腺症、乳癌ともにリスクが高くなる傾向が認められた。飲酒歴がある者の方が、乳腺症、乳癌両者でリスクが低くなる傾向が認められた。ブラジャーのサイズでは、乳腺症ではリスクに差が認められなかったが、乳癌ではサイズの大きい方がリスクが高いという結果が得られた。喫煙歴では、乳癌ではリスクに差がなかったが、乳腺症では喫煙歴のある方がリスクが高かった。乳癌と乳腺症のリスク要因については、異なる部分があるが、共通する部分も多く、乳腺症の存在は乳癌のリスクを高める要因の存在を示すものと考えられる。乳腺症例に対しては、その時点で乳癌の存在が確実に否定できる場合であっても、乳腺症の存在部位だけでなく、乳腺全体の経過観察を確実に行う必要があるものと思われる。
超音波検査法による正常乳腺、乳腺症、乳癌の乳腺実質の厚さの測定では、乳腺症は正常乳腺に比べて乳腺実質が厚いという結果が得られたが、乳癌については正常乳腺、乳腺症の間の数値で、一定の傾向が認められなかった。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

菊地正悟,乳腺症は乳腺の先行疾患であるか,癌の臨床,38巻・3号:p303-308,1992年2月,

菊地正悟,乳腺症は乳腺の先行疾患であるか,日本がん疫学研究会, 1992年6月12日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

都内の2施設より,平成3年9月末頃までに正常例約200例,乳癌約200例,乳腺症約70例について,乳腺超音波検査による乳腺組織の厚さ,皮下脂肪組織の厚さ,性状等に関するデータと妊娠出産歴,既往歴,生活習慣等に関するデータの収集が完了する。これらデータをコンピューター入力し,統計数理研究所から方法論の提供を受けて,症例対照研究の手法や,多変量解析の手法を用いて分析を行い,これらの要因相互の関連性や,乳癌,乳腺症のリスクとの関連性を明かにする。乳腺組織の状態は年齢や月経周期による影響を大きく受けるので,閉経前後に分けた分析や,月経周期による影響を測定した上で,補正を行った分析なども行う。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

菊地 正悟

順天堂大学

高木 廣文

統計数理研究所