平成101998)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

10−共研−90

専門分類

8

研究課題名

情報機器の使用と日本語能力に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ヒライ ヨウコ

平井 洋子

ローマ字

所属機関

東京都立大学

所属部局

人文学部

職  名

講師

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

現在の文書作成は、ワープロソフトで行われることが当たり前となり、それに伴い文書作作成に必要とされる漢字使用能力も手書きの時代とは異なってきている。「書き」の能力が退化しつつある一方、漢字検索により「読み」の環境はかえって豊富である。情報機器の使用により、漢字使用を中心とした日本語能力がどのような影響を受けているかについて明らかにしたい。


昨年までの調査では、ワープロのみに依存し手書きで漢字を書かない人に漢字書字が劣る傾向が見られたが、それが絶対的なワープロ使用そのものに由来するものなのか、手書きに費やす時間の少なさに由来するものなのかはわからなかった。そこで今年度は、絶対的なワープロ使用時間と手書き時間のそれぞれが漢字書字にどのような影響を及ぼしているかについて、多項ロジットモデルを用いて検討を行なった。
調査の結果、1日にワープロを使う時間が長くなるほど漢字がそっくり書けなくなる誤りが増え、また何らかの漢字を回答したとしても、文字の音・形態側面に比べ意味側面で異なる漢字を書く誤りが早く表れる傾向が見られた。一方、手書き時間との関連では、手書きに費やす時間が長くなるほど何らかの漢字を回答し、全く書けないということは少ないことがわかった。
また誤答であっても、手書き時間が長いほど意味・音・形態のいずれの側面でも正答に近くなる傾向が見られた。
以上のことから、漢字書字力の低下にはワープロ使用時間も手書き時間も、共に影響していると判断される。ただしワープロの長時間使用に伴う「書けない」現象は、意味的な記憶が音・形態的な記憶に比べ早く減衰することによるものである可能性があり、手書き時間の減少による「書けない」現象とは異質なものである示唆が得られた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

平井洋子,漢字書字に及ぼすワープロ・手書き時間の影響,
日本心理学会第63回大会,1999年(発表予定)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

昨年の調査結果にもとづき、語彙能力と漢字の「読み」「書き」能力が、情報機器依存度とどのような関係にあるかについて、ひきつづき調査研究を行う。調査対象は大学の学部生、院生とし、今年度は文科系だけでなく理科系も対象としたい。今年度の調査は漢字の属性をコントロールし、どのような場合に「書けなく」なるのかを主な関心事としたい。調査結果の解析には、漢字の属性や被験者の属性など、質的データを用いた解析が中心となることが予想される。その点で統計数理研究所の知見、技術が欠かせないものと考える。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

土屋 隆裕

統計数理研究所