平成61994)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

6−共研−75

専門分類

7

研究課題名

東洋医学の臨床評価法

フリガナ

代表者氏名

ツタニ キイチロウ

津谷 喜一郎

ローマ字

所属機関

東京医科歯科大学

所属部局

難治疾患研究所

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

漢方薬や鍼灸などのいわゆる「東洋医学」は数千年の歴史をもち現在でもなお広く用いられている。その使用の妥当性は基本的には歴史的に蓄積された情報を基にしているが、近年の保健サービスの中でそれが用いられ場合、保健行政から臨床における意志決定までの種々のレベルで「無作為比較試験」を代表とする近代的評価法などとどう適応させるかが問題となる。本研究では、近代的評価法の東洋医学の分野への導入の歴史的プロセス、現状、その問題点、さらに解決法について調査研究する。


平成6年度から開始した本研究は、最初に鍼灸を中心とすることとし、初年度には、まず、文献計量学的研究(bibliometrical study)を行った。MEDLINEを用いて検索すると、鍼についての研究は1970年代初期から始まり、全体で約3,000件あり、近年では、年に約 300件収録されている。しかし、その内訳をみると、中国(30%)、ソ連(20%)などが多いが、日本は2%にしかすぎない。これは、日本の鍼関係の雑誌がMEDLINEに収録されていない、つまり雑誌選択にバイアスがあるためである。また、日本の「医学中央雑誌」のCD-ROMを用いて検索すると、近年、毎年約 300 件ある。ただし、ほとんどが作用機序、治療手技、症例報告、観察研究などであり、ヒトを対象とした比較試験は数件にとどまる。
そこで、これにhand search を加えると、これまで日本でなされた比較試験は13件であることが明らかとなった。本結果は、本共同研究のメンバーが中心となって企画し`94年6月、青森でのWHO Working Group on Clininal Research Methodology for Accupuncture で報告された。腰痛に対する鍼灸療法の比較試験は、そのほとんどが海外のものであり、その現状と問題点を、「骨・関節・靭帯」誌に報告した。また、日本でなされた論争の文収集が開始された。これまで約10件の論文があり、この中には、統計学を用いた評価法についての論争も含まれる。さらに単一被験者法の鍼灸領域への適応可能性を検討し、一部実験を含めて「全日本鍼灸学会誌」、「Japanese Journal of Physiology」に報告した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

津谷喜一郎、並木隆雄、村松慎一:JMEDICINEに収録される東洋医学関係雑誌の収録開始年と収録件数、日本東洋医学雑誌,45(1),1994
西条一止、七堂利幸、津谷喜一郎:腰痛に対する鍼灸とその関連療法・骨・関節・靱帯,7(5),1994
七堂利幸:鍼灸の臨床評価法(27)、医道の日本,1994年12月号
桑田繁:新しい実験計画法をしての単一被験者法の紹介(3)−内的妥当性と外的妥当性−.全日本鍼灸学会雑誌、44巻(3号)(9月1日号),1994
Kawakita,K.etal:Suppression of the jaw -opening reflex by fail pinching in rats-evaluating by C-statistics for single subject experimental design, Japanese of Physiolegy, 44, 1944.

Tsutani,K.,Nishijo k.,Shichido T.,Segami K.:Current studies of Clinical trials of Accupuncture.WHO Working Group meeting on Clinical Research Methodology for Accupunture,Aomori,1-4 June,1994

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

<研究計画>1)漢方薬・鍼灸の各分野における、近代的評価法を用いた文献の収集とデータベースづくり。2)近代的評価法をこの分野に適用することに関して生じた論争(推計学論争)に関する文献収集と解析。3)研究プロジェクトの調整のための研究者間の打合わせと討論。4)問題点の整理と解決法の探索。
<統計数理研究所との共同研究実施の必要性>本研究は、臨床薬理学者、東洋医学の臨床家、教育者を中心に、東洋医学における実際のニーズにもとづいて発案されたものであるが、対象領域が統計学を用いたものであるため、この分野の基本的な資料を保有し、また経験と実績をもつ専門家との共同作業が必須である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川喜田 健司

明治鍼灸大学

桑田 繁

くらしき作陽大学

七堂 利幸

大素堂

西條 一止

筑波技術短期大学

柳本 武美

統計数理研究所