平成81996)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

8−共研−121

専門分類

8

研究課題名

心理領域自由回答形式デ−タの統計解析

フリガナ

代表者氏名

ドイ キヨハル

土井 聖陽

ローマ字

所属機関

宮崎産業経営大学

所属部局

経営学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

9 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

自由回答形式によるデ−タ収集を基盤にする研究法は、心理学の様々な領域で重要な課題とされてきた。しかし、この種のデ−タ解析は、ほとんどが主観的にコ−ド変換を施したアフタ−コ−デイング済みデ−タの解析に留まっていた。本研究では、自由回答形式デ−タの分析が有効と考えられる複数の心理領域に事例対象を取り、新たな統計解析手法のサ−ヴェイを行い考察し、同時に、各デ−タ−タ構造の解明過程で、こうした方法論の有効性を比較検討し、併せて応用可能性を明確化したい。


自由回答型データによる分析が有効と見られる心理学分野の3領域における問題の背景と研究対象とすべき課題が検討された。まず、認知研究の例では、「教育」、「教訓」などの主題に対する「比喩」の生成とその根拠についての回答から得られた単語頻度を集計し、単語間の連想関係を図示する方法が提案された。
ここで、自由回答が単語単位にほぼ限定され、連想関係も2次元のみであった。コミユニケーション・ネットワークの例では、組織内における情報伝達構造をLAN環境下で取得の電子メール・ログ・ファイルの分析から探る方法が提案され、大量ログ・ファイルの処理法の抱える問題点が指摘された。
最後に、「成功不安構造」の例では、学生による数百字の回答文が、米国人女性研究者による7種の基準に基づき成功不安の有無に分類されるが、その回答内容自体の分析がなされおらず、しかも7種の基準に日米の文化差が指摘された。
そこで、自由回答のテキスト情報から、単語頻度集計、対応分析とクラスター化法を用いた解析を行い、さらなる検討を行った。
その結果、7種の基準に対応しない成功不安に関連する単語が多数抽出され、それらが主に日米の親和性に関する文化差と回答者の性差に関係していることが示唆された。
さらに、単語ならびに回答者の分類等から、成功不安における文化差、性差、条件差等についてある程度整合的な解釈が得られることが明らかとなった。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

土井聖陽・大隅 昇,成功不安の構造の分析における文字情報の活用,日本行動計量学会
第25回大会,1997年9月5,6,7日。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

複数の心理領域で得られたデ−タ、例えば、成功不安に関する投影法デ−タ、阪神大震災時の神戸地区における災害被害の心理的状況の聞き取り調査デ−タ、比喩生成に関するデ−タ、さらに消費者行動に関するデ−タなどの自由回答形式のデ−タに基づき、テキスト型デ−タを電子化処理が可能なファイルとして作成し、これの直接的な分析を行う新たな解析法を構築して、これらデ−タへの適用を試みる。これにより、自由回答型デ−タの方法論の適用可能性や問題点を具体的に明らかにすると同時に、各デ−タの特質や構造を、従来とは異なる視点から比較検討することを試みる。こうした研究を効果的に進めるためには、貴研究所の教官や施設あるいは開発ソフトウェアの利用が必須と考える。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大隅 昇

統計数理研究所

楠見 孝

東京工業大学

杉本 徹雄

上智大学

高木 修

関西大学

竹村 和久

筑波大学

辻本 英夫

大阪市立大学

福井 誠

甲子園大学

古川 勝

奈良産業大学