平成101998)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

10−共研−4

専門分類

1

研究課題名

漸近展開の研究

フリガナ

代表者氏名

サカモト ユウジ

阪本 雄二

ローマ字

所属機関

名古屋大学

所属部局

工学部

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

確率過程の汎関数の確率分布の漸近展開について研究する。さらに、独立標本の汎関数の期待値にたいするエッジワース展開やラゲール展開などの漸近展開にたいして、統一的な視点を与えることを目標とする。また、プートストラップ法や正規化変換などの漸近展開から得られる統計的手法の定性的な分析も行う。


高次漸近展開は,複雑な統計モデルにおける統計量の分布の近似公式を系統的に導き,また漸近有効性などの高次漸近理論にとって不可欠であるばかりか,情報幾何などの新しい数理的視点を誘導することが,独立標本モデルや時系列モデルにおいてはよく知られている.連続時間径数をもつ確率過程に対しても,小さな拡散モデルなどの一部のモデルについて,漸近展開をもちいた高次漸近理論が展開されているが,本研究では,統計量がミキシング性を持つマルコフ過程の汎関数で近似できる場合について,高次漸近展開を導出し,その典型的で最も有用な例として,M推定量の3次の漸近展開を求めた.
また,M推定量が最小コントラスト推定量である場合,いわゆるバートレットの関係式が成り立てば,漸近展開の係数は,情報幾何的な定数で与えられることも明らかにした.これらの結果は,時系列のような離散時間径数を持つ確率過程やジャンプを持つ拡散過程などに応用可能であるが,本研究では連続な拡散過程に対するM推定量の漸近展開を導いた.その結果は,モデルの特定に失敗した場合も含んでいる.さらに、M推定量の漸近展開を導くのと同様な方法で,局所対立仮説に対する対数尤度比が,ミキシング性を持つマルコフ過程の汎関数で近似できる場合について,その高次漸近展開を求め,ある正則条件のもので最尤推定量の2次有効性を証明した.この結果は,連続時間径数,離散時間径数を問わず,多くの確率過程に応用可能であるが,特に連続な拡散過程に対してそのことを証明した.


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Sakamoto,Y. and Yoshida,N. (1998). Asymptotic expansions of M-estimator over Wiener space. Statistical Inference for Stochastic Processes, 1, 85-103
阪本雄二,吉田朋広(1999). 拡散過程におけるM推定量の3次の漸近展開. Cooperative Research Report 121, The Institute of Statistical Mathematics.

Sakamoto,Y. and Yoshida,N. Higher order asymptotic expansions for a functional of a mixing process. STATISTIQUE ASYMPTOTIQUE DES PROCESSUS STOCHASTIQUES II. Universite du Maine, December 1998.
阪本雄二,吉田朋広. Expansions for Mixing Processes and Second Order Efficiency. 日本数学会,1999年3月.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

まず、マリアヴァン解析より得られるウイナー空間上に実現された確率過程にたいする漸近展開を、独立標本にたいする高次漸近展開を含むように拡張することを試みる。その一つのアプローチとして、特性関数の漸近展開の方法にマリアヴァン解析を応用する。そうして得られた漸近展開より、確率過程の統計推測の情報幾何的な構造を明らかにする。また、プートストラップ法や正規化変換などのエッジワース展開により導かれる手法に情報幾何的な視点を与え、さらに、確率過程の場合への拡張を模索する。また、確率過程の予測における漸近展開の問題を研究する。この分野の資料を集め、定期的にセミナーを開く。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

栗木 哲

統計数理研究所

志村 隆彰

統計数理研究所

吉田 朋広

東京大学

汪 金芳

統計数理研究所