平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−115

専門分類

7

研究課題名

ヒトの発育の時系列解析

フリガナ

代表者氏名

トウゴウ マサミ

東郷 正美

ローマ字

所属機関

神戸大学

所属部局

発達科学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

発育を時系列解析で研究するのが目的である。従来の発育学では年1回のデータに発育曲線のあてはめを行なってきたため、時系列解析による研究は稀である。
我々は発育の月次データをセンサス局法で解析してきたが、貴研究所の北川教授が作成されたDECOMPが発育波動の解析に有効であったのでさらに研究を進めたい。1日2回測定データも解析手法の選択から着手したい。


ヒトの発育は時系列解析で解明されるべきものであるのに、時系列解析を用いた研究は今のところ日本に限られている。
1971年以来現在まで継続して同胞5人の身長と体重を毎月測定し、その結果をセンサス局法(以後 X−11と略す)で解析してきた。この結果、トレンドに波動が現れた。これは、発育は波動せずに滑らかに進行し、思春期のみに大きなピークが現れるという従来から信じられてきた定説に反する。ここで発育は波動するという新説が我々によって出された(Togo & Togo,1982他)。
今年度の共同研究では、月次データをDECOMPで解析した。まずAR過程の次数を0とすると、トレンドにはX−11と同様に波動が現れ、そのパタンはほぼ同じである。次にAICを参照しつつARの次数を変えてみると、トレンドから波動が消失し、それがそのままあAR過程として分離された。即ち波動の正体はAR過程であることが分かった。このAR過程として把握されたものが、生物的にはどんな現象であるのかは、今後の課題である。
また、1日2回の朝晩、ひと組の成長期の姉妹とその母親を継続して5年間(姉については3年間)測定し、DECOMPで解析した。その結果、月次データと同様に毎日の細かい波動はAR過程として分離された。さらに1週間の周期を仮定するとAICが下がることから、僅かではあるが子どもの発育に週変動(7日周期)が存在することが示唆された。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

1)1971年から5人の同胞の身長と体重の月次データをDECOMPで解析する。分離されたAR過程が示す波動を生物学的にいかに理解するかは困難な問題ではあるが、その手がかりを得られれば幸いである。
2)測定開始時には小児であった上記の5人の被検者はすでに成人であり、発育期から成人への移行の姿を把握する。
3)上記とは別個に、朝晩1日2回の測定が行われている。これも時系列解析を行ないたいが、まずどのような解析方法を選ぶべきかから着手したい。
以上はいずれも前例のない試みであり、貴研究所の時系列解析の専門家との共同研究ではじめて実りあるものになると期待される。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

北川 源四郎

統計数理研究所

小林 正子

国立公衆衛生院