平成8（1996）年度　共同研究Ａ実施報告書

 

課題番号

8−共研−106

専門分類

8

研究課題名

源氏物語の計量分析

フリガナ

代表者氏名

ムラカミ　マサカツ

村上　征勝

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

領域統計研究系

職　　名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅　費

0千円

研究参加者数

7　人

 

 

 

研究目的と成果（経過）の概要

源氏物語は、平安時代の文献の中でももっとも多くの異なり語を持つ物語であり、量的にも質的にも平安時代の日本語の宝庫といえる。本研究は、源氏物語を、統計的手法を用いて言語的特徴を計量分析し、現在まで未解決のまま至っている著者複数説や、成立過程における後期挿入説などを検証していくと同時に、他の平安期の文献にも応用できる方法を確立し、平安期日本語の特徴を明確にしてゆくものである。


「源氏物語」の計量分析のために、昨年度までに「源氏物語大成」を底本として、「源氏物語」54巻の全文を単語分割し品詞情報を付けたデータベースを作成した。本年度は「源氏物語」関連文献のデータベースの作成を行った。
「紫式部日記」については、データベースを完成し、「紫式部日記語彙用例総索引」を出版した。
また「山路の露」、「雲隠六帖」のデータベースを作成した。加えて、文章データを処理するための種々のプログラムを開発した。
また、作成したデータベースを用いて、「源氏物語」の各巻の文章を統計的に分析し、他作家説のある「源氏物語」の後半の10巻の文章が、品詞の使用率、言葉の使用率など幾つかの点で前半の44巻と異なること、また「源氏物語」の会話文と地の文では、助動詞の用い方に明らかな差があることなど新しい知見を得た。

 

当該研究に関する情報源（論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等）

・上田英代, 村上征勝, 今西裕一郎, 樺島忠夫, 上田裕一, 「ｺﾝﾋﾟｭｰﾀを用いた語彙用例総索引作成の課題と方向性」, 書誌索引展望, Vol.19, No.1, 1-11, 1996年
・村上征勝, 「計量文献学の歴史と課題」, 日本計算機統計学会誌, 1997年
・村上征勝, 「著者は誰か？−数字で名作を読む−」, ｼﾝﾎﾟｼﾞｳﾑ「人文科学とｺﾝﾋﾟｭｰﾀ」,79-87, 1996年
・上田英代, 村上征勝, 今西裕一郎, 樺島忠夫, 藤田真理, 上田裕一, 「源氏物語の文章の統計分析」, 情報処理学会研究報告 96-CH-31, 33-38, 1996年
・村上征勝, 「源氏物語の言葉を分析する」, 統計数理, 44巻1号, 127-131, 1996年
・村上征勝, 「人文科学における数量的分析のめざすもの」, 人文学と情報処理,第13号,69-71, 1997年
・上田英代, 村上征勝, 今西裕一郎, 樺島忠夫, 藤田真理, 上田裕一, 「源氏物語の数量分析」, 人文科学における数量的分析(2), 135-140, 1997年
・今西裕一郎, 上田英代, 村上征勝, 「紫式部日記語彙用例索引」, 勉誠社, 1997年2月
・村上征勝, 「真贋の科学−文章の計量分析による文献の真贋判定−」, ＨＡＳ研究会第２回情報教育分科会, 1996年8月
・村上征勝, 「源氏物語の計量分析(4)」, 日本行動計量学会第24回大会, 1996年9月
・村上征勝, 「著者は誰か？−数字で名作を読む−」, ｼﾝﾎﾟｼﾞｳﾑ「人文科学とｺﾝﾋﾟｭｰﾀ」,1996年9月
・村上征勝, 「源氏物語の文章の統計分析」, 情報処理学会第31回人文科学とｺﾝﾋﾟｭｰﾀ研究会, 1996年7月
・村上征勝, 「源氏物語の助詞について」, 計量国語学会, 1996年9月
・村上征勝, 「源氏物語の数量分析」, ｼﾝﾎﾟｼﾞｳﾑ「人文科学とｺﾝﾋﾟｭｰﾀ」, 1997年3月

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

源氏物語の各巻における各品詞の使用頻度、接続関係、文の長さ、和歌の使用率などの各種の情報を用い、計量的な特徴を把握するため平成３年より研究を開始した。昨年度は作成した単語分割済みの品詞情報付きのデータベースを用い、源氏物語語彙用例総索引−附属語篇−全５巻を出版したが、今年度は「紫式部日記」の語彙用例総索引を出版するとともに、各種単語の出現率、各品詞の接続関係等の情報を計量分析し、著者複数説、後期挿入説に対する一つの回答を出してゆく。更に「山路の露」、「雲隠六帖」のデータ入力、校正、分かち書きなどを行ない、併せて考察する。又、この作業の過程で開発される言語検索システムは、日本語文献全般にわたり、広く活用可能なものである。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

今西　裕一郎

九州大学

上田　英代

古典総合研究所

上田　裕一

もとぶ野毛病院

樺島　忠夫

　

岸野　洋久

東京大学

山田　奨治

国際日本文化研究センター