平成272015)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

27−共研−2043

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

1

研究課題名

一般化エントロピーの幾何学と統計学

フリガナ

代表者氏名

ヘンミ マサユキ

逸見 昌之

ローマ字

Henmi Masayuki

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

36千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年の複雑系科学の発展からベキ型分布に従う現象が数多く発見され、これを最大化エントロピー原理で説明するために、統計物理学を中心とする分野で導入されたTsallisエントロピーという概念が注目を集めている。これに関して最近、本研究の分担者らによって、情報幾何学の観点から新たな知見が得られている。例えば、この分野ではエスコート確率と呼ばれる新しい概念が重要な役割を果たすが、これがもとの確率分布の射影変換によって得られることが示され、さらにそれに基づいて、この世界で幾何学的に自然な基準(双対平坦性)から決まる統計多様体の構造が、これまでに考えられていた統計学的に自然な基準(確率測度変換に関する幾何構造の不変性)から決まる統計多様体の構造(Fisher計量とアルファ接続)と異なることが示された。

このように幾何学的観点からは一定の成果が得られているが、Tsallisエントロピーに関する研究は統計物理学を動機としたものが多く、統計学的な研究は不十分である。そこで本研究では、幾何学的および物理学的な議論との関連を踏まえながら、この分野に現れるさまざまな概念の統計的意味や役割を解明することを主な目的とする。
また、Tsallisエントロピーは(通常の)エントロピーの一般化の1つの可能性に過ぎず、他にも様々な一般化エントロピーが提案されている。本研究ではそれらにも注目し、その意味や役割、お互いの関係などについても考察する。そして本研究を通じて、数学(幾何学)、物理学(統計物理学)、統計学の観点からの問題意識を照らし合わせながら、互いに刺激を与え合うことで、有益な異分野交流となることも目指す。

本年度は昨年度に引き続き、一般化された独立性や最尤推定(q-独立性やq-最尤推定等)について、その統計的意味に関する議論を行い、コピュラ等との関連についても考察を行った。次年度も議論を継続して行っていく予定である。また、本研究は数学(幾何学)や物理学(統計物理学)との交流という意味合いも有するものであるが、それぞれの立場からは、以下のような成果が出ている。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文発表

1. M. Sakamoto and H. Matsuzoe,
A generalization of independence and multivariate
Student's t-distributions Lecture Notes in Computer Science, Springer,
9389(2015), 740-749.

2. T. Wada, H. Matsuzoe and A. M. Scarfone,
Dualistic Hessian structures among the thermodynamic potentials in the
k-thermostatistics Entropy, 17(10), (2015), 7213-7229.

3. H. Matsuzoe and T. Wada,
Deformed algebras and generalizations of independence on deformed exponential
families" Entropy, 17(8), (2015), 5729-5751.

4. T. Wada and A. M. Scarfone, Information Geometry on the k-Thermostatistics
Entropy 17(3), (2015), 1204-1217.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会は特に開催していない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

松添 博

名古屋工業大学

和田 達明

茨城大学