平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−42

専門分類

5

研究課題名

ランダムな幾何学構造を持つ系の相転移とそのモンテカルロ法

フリガナ

代表者氏名

カワムラ ヒカル

川村 光

ローマ字

所属機関

大阪大学

所属部局

教養部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ランダムや継がりや幾何学構造を持った系の内部自由度(例えば磁性体のスピン)の秩序状態に於ける諸性質及び秩序化に伴う相転移現象の解明は磁性・統計物理学の分野の主要な課題の1つである。本研究では前年度の研究により得られた知見に基づき,特に所謂“スピングラス”として知られる一連のランダム磁性体に焦点を合わせ,計算機シミュレーションによってランダムな系の秩序化現象の本質の解明を目指す。


ランダムな継がりや幾何学構造を持った系の内部自由度(例えば磁性体のスピン)の秩序状態に於ける諸性質及び秩序化に伴う相転移現象の研究を続けている。本年度は特に所請“スピングラス”として知られるランダム磁性体の統計モデルを対象に,その秩序状態でのスピン配位と空間パターンを中心に,モンテカルロ法及びクエンチ法に基づく研究を行なった。
スピングラスでは隣り合うスピン間の相互作用の符号が場所によりランダムに正及び負になる為,全系のエネルギーを最小にするスピン配位が単純な平行配位や反平行配位ではなく一般には極めて複雑なものになる。この状態に一様な磁場を印加するとスピンは磁場方向にそろう性質がある為,磁場による効果とスピン間の相互作用による効果が競合しスピンがある種の空間構造を作る事がある。我々はこういった条件下で出現するスピン構造に興味を持ち,実空間の於けるスピンのスナップ・ショット及びそれをフーリエ変換した波数空間(k空間)での散乱関数を計算機シミュレーションにより計算した。
その結果散乱関数にある特徴的な長さlに対応した場所に明瞭なピークが現われる事及びピーク位置を与える波数k〜1/lは磁場Hに関してほぼk〜1/〓の様に変化する事を見出した。これに対応して実空間でもサイズがlのスピンの空間構造が認められた。特に磁場が弱い時にはスピンは一種の渦構造を作っている事が見出された。また散乱関数は一般に中性子回折の実験手段により測定可能である。磁場中のスピングラスに対する最近のフランスのグループの実験データを基に,我々の計算結果との比較・検討も合せて行なった。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

“磁場中のハイゼンベルグ・スピングラフの散乱関数”
川村光・種村正美
日本物理学会分科会(於鹿児島大学)1989
“Scattering Function of Heisenberg Spin Glasses in a Magnetic Field”
H.Kawamura and M.Tanemura
J.Phys.Soc.Jpn.(投稿予定)。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本研究ではモンテカルロ法及びクエンチ法による計算機シミュレーションを主要な研究手段として予定している。モンテカルロ法では大量かつ良質の一様乱数が必要となる。統計数理研究所に設置されている乱数発生器から生成される乱数は通常使われている擬似乱数における周期性等の問題が存在せず,信頼性のあるシミュレーションが可能であり,前年度の研究に引き続き今回も統計数理研究所の乱数発生装置が非常に重要な役割りを占める。また,クエンチ法ではデータをランダムネスやスピンの初期条件を変化させて繰り返し(〓〜〓回)計算し平均を取る事が必要であり,大型計算機の有効な利用と信頼性のある統計処理が不可欠である。以上の手段によりスピングラスに関する種々の実験データと直接比較できる物理量特に中性子の散乱関数を計算し,既存の実験データの解釈を行なうと共に理論的予言をも目指す。また合わせて長時間極限でのスピン動的挙動も明らかにしたい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

種村 正美

統計数理研究所