平成192007)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

19−共研−9

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

文章のジャンル判別に寄与する指標としての複合動詞の研究

フリガナ

代表者氏名

ムラタ ミノリ

村田 年

ローマ字

MURATA Minori

所属機関

慶應義塾大学

所属部局

日本語・日本文化教育センター

職  名

教授

 

 

研究目的と成果の概要

本研究の最終目標は、文章のジャンル判別に有効な指標としての語句が存在することを実証的に明らかにし、その成果を専門日本語教育における論述文の体系的かつ効率的な教育方法に結びつけることである。
申請者はこれまで専門分野の論文や大学教科書を中心に、論述文の文章構造を支える文型群を指標とした文章のジャンル判別の可能性を検証することによって、同一ジャンルの文章に共通する表現形式が存在することを明らかにしてきた。大学で専門分野に進む外国人日本語学習者はこのような表現形式を学習段階の早い時期から学習することにより、論文の読解・作成能力を短期間に養成することが可能になると考えられる。そこで文章のジャンルを判別するための新たな指標の可能性として複合動詞を選び、調査を行った。
 対象文章資料は、昨年までに個人的に収集したコーパスの拡充と整備を行ったもので、論文(物理学、工学、文学、経済学)、小説(近代小説、現代小説)、新聞社説の約350編の文章資料である。これらの文章資料を対象とし、複合動詞の使用頻度の調査を進めた。複合動詞の種類は多様なため、検索項目として複合動詞の後項動詞41を選定した(「かける」「かかる」「はじめる」「だす」「でる」「まくる」「つづける」「おえる」「おわる」「つくす」「きる」「とおす」「ぬく」「はてる」「そこなう」「そんじる」「そびれる」「かねる」「おくれる」「わすれる」「のこす」「あやまる」「あぐねる」「そこねる」「すぎる」「なおす」「なおる」「つける」「つく」「なれる」「あきる」「あう」「あわせる」「あがる」「あげる」「こむ」「こめる」「いる」「いれる」「たつ」「たてる」)。現在はこれらの項目の使用頻度の調査の途中である。また並行して多変量解析の方法論の再確認と新たな手法について検討を行った。

<論文>
村田 年「文章と複合動詞-論述文ジャンルを特徴づける新たな指標を探して-」『日本
語と日本語教育』慶應義塾大学日本語・日本文化教育センター36号pp1-33(2008)
村田 年「専門日本語教育における論述文指導のための接続語句・助詞相当句の研究」『統計数理(特集「文化を科学する」)』統計数理研究所Vol.55,No.2,pp269-284(2007)