平成302018)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

30−共研−2002

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

1

研究課題名

衛星搭載GNSS観測データおよび光学観測データを用いた電離圏トモグラフィー

フリガナ

代表者氏名

ウエノ ゲンタ

上野 玄太

ローマ字

Ueno Genta

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

24千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 宇宙空間からの人工衛星などによるGlobal Navigation Satellite System(GNSS)観測データおよび光学観測データを用いて電離圏電子密度の3次元構造をトモグラフィーにより推定する事を目的とした研究を進めた。
 高度100km から1,000kmにかけて広がる電離圏は密度10^6個/cc程度のプラズマが存在しているが、その変動は大きく高度、緯度、地方時、季節、地磁気擾乱度、太陽活動度などによって激しく変化している。特にその高度方向の構造は電場と風による変動を大きく受け変動が大きい。電離圏の観測手段としては地上GNSS受信機網による全電子数の観測があるが、高度方向に電子密度を積分した全電子数のみ測定可能なため高度方向の構造を捉えることができない。そこで複数の衛星による観測視線方向の違いを用いて全電子数から電子密度の3次元分布を求めるトモグラフィー手法を研究代表者らが開発し、利用されているが、空間分解能が十分にあげられない点、地上GNSS受信機が十分にない地域では困難な点、などが課題となっている。
 そこで本研究では、地上GNSS受信機の配置に関わらず全世界でデータが測定可能な人工衛星搭載のGNSS受信機の観測データと人工衛星及び国際宇宙ステーション(International Space Station: ISS)搭載の光学機器の観測データをこれらの地上GNSS受信機データに併せて用いることで高精度な3次元電子密度分布の推定を行うアルゴリズムの開発を進めた。用いたデータは、地上GNSS受信機網データ、衛星搭載GNSS受信機データ、衛星及びISS搭載光学観測データの3種類である。地上GNSS受信機網は地殻変動の測定と精密測位の基準点として全世界で整備が進んでおり、日本国内では国土地理院によってGEONETが運用されている。その他海外でも同様の受信機網が運用されており、情報通信研究機構の宇宙天気グループによってそのデータの収集と全電子数の算出とが行われている。GNSSとしては従来広く用いられていた米国によるGPSに加え、ここ数年で急速に展開が進んだ他のGNSS(欧州によるGalileo、ロシアによるGLONASS、日本による準天頂衛星群、中国によるBeidou)も用いることで、データ密度を高める。衛星搭載GNSS受信機データとしては、CHAMP衛星などの過去のデータに加えて利用を予定していたCOSMIC-2衛星群が2019年に打ち上げが延期されてしまい、今後の課題となっている。光学観測データとしては、ISS—IMAPによる酸素原子による630nm大気光、酸素イオンによる30.4nm共鳴散乱光のデータを用い、アルゴリズムとしては、これまで研究代表者及び研究分担者が開発してきた地上GPS受信機網データなどを用いた拘束条件付き最小自乗法による電子密度推定手法を発展させたものの開発を進めた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Hozumi, Y., Saito, A., Sakanoi, T., Yamazaki, A., and Hosokawa, K., Mesospheric bores at southern midlatitudes observed by ISS-IMAP/VISI: a first report of an undulating wave front, Atmos. Chem. Phys. Discuss., doi:10.5194/acp-2018-383, 2018. (論文発表)
Nakata, H., A. Takahashi, T. Takano, A. Saito and T. Sakanoi, Observation of equatorial plasma bubbles by the airglow imager on ISS-IMAP, Progress in Earth and Planetary Science, Vol. 5, 66-78, doi:10.1186/s40645-018-0227-0, 2018. (論文発表)
Tsugawa, T., M. Nishioka, M. Ishii, K. Hozumi, S. Saito, A. Shinbori, Y. Otsuka, A. Saito, S. Buhari, M. Abdullah, and P. Supnithi, Total Electron Content Observations by Dense Regional and Worldwide International Networks of GNSS, J. Disaster Res., 13(3), 535-545, 2018. (論文発表)
Saito, A., T. Tsugawa, T. Kazama, N. Nishi, and Y. Odagi, Earth Science Education with a Portable 3D Digital Globe System, Asia Oceania Geoscience Society Annual Meeting, 2018/6/3-8. (学会発表)
齊藤昭則, 山本衛, 齋藤享, GPSを用いた電離圏電子密度トモグラフィ, MTI研究集会, 小金井, 2018/9/10. (学会発表)
山本 衛, 水野 遼, 斎藤 享, 齊藤 昭則, GPS-TEC電離圏3Dトモグラフィー;スーパーコンピュータによる大量データ解析, 日本地球惑星科学連合大会2018, 千葉, 2018/5/20. (学会発表)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本年度は開催なし。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

池田 孝文

京都大学

齊藤 昭則

京都大学