平成192007)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

19−共研−2012

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

二次林形成におけるタブノキとシイノキの分布パターンの解析

フリガナ

代表者氏名

シマタニ ケンイチロウ

島谷 健一郎

ローマ字

SHIMATANI Kenichiro

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

75千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究目的:
当初の目的は、スダジイとタブノキの分布パターンの解析であったが、現地の状況は事前に得た情報とは異なり、火山ガスによるスダジイの立ち枯れが数多く確認された。そこで、噴火7年後の樹木の更新状況を明らかにすることが、三宅島にとって急務であることが判断し、天然林における火山災害でもっとも耐性のある樹種を選抜する準備調査を主目的とした。

経過及び成果:
研究打ち合わせ会議
三宅島現地調査の方針 7月24日、10月18日
三宅島の状況確認および調査申請 9月10日 東京都庁
現地調査
11月18日 − 21日
1997年に分布調査を行った大路池周辺のスダジイについて今回の結果と比較すると、湖畔に分布する標高200m以下の個体については火山等の影響は無かったが、標高200m以上の場所では尾根に行くに従い立ち枯れた個体数が増加しており、標高250mの尾根沿いでは、ほぼ全滅して立ち枯れていた。これらの林床ではスコリア層が10cm程あり、スコリアと火山ガスによる影響が考えられた。
また、三宅島では噴火後、2004年に作成された「三宅島緑化ガイドライン」をもとに、「三宅島緑化マニュアル」を作成して現在、現地の各所にて植栽試験が行われているが、その多くの樹種がヤブツバキであることが危惧される。本現地調査では、火山噴火した雄山の標高600mから海岸部のひょうたん山にはヤブツバキは分布していない。他方、天然林では、現在、火山ガスの高濃度地区に指定されている阿古周辺で、萌芽再生の著しい樹種はタブノキやガクアジサイで、オオバヤシャブシの更新が認められた。したがって、「三宅島緑化マニュアル」の推奨する樹種は、三宅島の天然更新とは異なる。三宅島では繰り返し火山噴火が起きているので、正確な年代別の遷移を調査する事も可能である。今後は、樹木の大規模な更新および遷移調査及びこの動態データに関するモデリング構築を、実験計画法に基づく植栽試験と並行して進める必要がある。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・都庁および、環境省へ調査結果の報告書を提出するため、現在、資料を作成中。

内容:
太路池周辺は、2000年の火山噴火においても、比較的影響がないとされていたが、数多くのスダジイの立ち枯れが存在していることが確認された。これについては、火山ガスによる影響が考えられた。
スダジイに関しては、標高250m以上の地域ではその殆どが立ち枯れており、再生更新しているのは低木のサルトリイバラ、多年生草本のハチジョウススキ、ハチジョウイタドリであった。

太路池周辺のタブノキについては、湖畔周辺に分布していたこともあり、立ち枯れはなく、火山噴火以前と変わりのない分布状況であった。

低木層では、火山噴火の影響に最も強いと思われたのは、ガクアジサイ、サルトリイバラであった。
三宅島の火山噴火後の遷移を考慮すると、樹木の植栽の最適な樹種は、オオバヤシャブシ、タブノキ、スダジイであり、ヤブツバキなど、優占種とならない樹種を最初に植栽することは、現地調査から考慮して、かえって遷移の遅れを生じさせるものと危惧された。

以上のことは、都庁および環境省に報告書として提出し、現在進められているグリーン化の再検討、および三宅島の森林再生に最適な植栽が進むよう資料として提出する。

さらに、以下のような場において本調査の概略及び提言を簡単に紹介した。

・日本ジャーナリスト会議 ジャーナリスト塾 里山班にて、三宅島の調査で明らかにされた現状を発表。
 2007年 12月10日 プレスセンタービル
・島嶼の里山「三宅島の現状について」 1月13日 奥多摩都民の森 8名
・法政大学 小金井キャンパス 生物の多様性の授業にて、三宅島の現状として研究成果を講義。
2008年4月12日 

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

小林 悟志

情報・システム研究機構