平成クオ1989)年度 共同研究集会実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−102

専門分類

研究課題名

毒性・薬効データ解析における多重比較法の利用

フリガナ

代表者氏名

ヨシムラ イサオ

吉村 功

ローマ字

所属機関

東京理科大学

所属部局

工学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

23 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

1988年度のグループ研究(63−共研−99)において,申請者らは,多重比較法に関して,多段階手順化,アンバランスデータに適用するための工夫,分散の不均一性への対応化が進行していることを確認し,その性能と現実適用性を検討した。さらに,それを毒性試験データの解析に使うときには,必要な推測内容が主として群間比較であることから,検出力のよい手法をある程度絞り込むことが可能との見通しを得た。また,各種の手法の使い分けの研究も進めた。しかし,そのような研究結果が,実際問題に的確な指針を与えたことになるかどうかについては,適用法を明確に実際家に提示し,現実のデータにたいする使用経験を深めてもらうことが必要である。そのためには,理論家と実際家の両方を含めた研究会を開催し,適用法について討論すると共に,現実問題への適用結果を吟味するプロジェクトを討論するのが適切である。その場としては統計数理研究所が最適である。そこで本研究会の開催を提案する。


昨年度は,当研究所の共同研究(63−共研−99)で,毒性・薬効データにおける多重比較方式の標準化の研究を行った。その中で,近年提案されている,新しい型のBonferroni手順や,多段階の上昇あるいは下降手順の性能を検討した。そしてそれらのいくつかは充分利用価値のあることを明らかにした。ところがそれらは,実際家の間でまだ有効には利用されていないこともわかったので,今年度は,研究集会の形でその実際的な利用法を議論することにした。
研究集会は,1990年の2月9〜10日に当研究所で行った。最初は20人程度の参加を想定していたが,民間企業からの参加申し込みが増えて,約65人の集会となった。成果としては次のことがあげられる。1.データ解析の現場から,多重比較法の利用の実態が述べられ,それをめぐる議論の中で,多重仮説の前提の一部が成立していないとき,多重比較法を利用することが必ずしも無条件によいと言えないことと,データの質が良くないときのロバスト性が重要であることとが確かめられた。2.近年の多重比較法は計算機のパッケージがないと利用しにくい面があることが指摘された。そしてそれに応じる形で,SAS,富士通などのソフトウエア会社が,成果を利用しやすい形にすることを考慮する姿勢を示した。3.標本の大きさが群毎にアンバランスな場合や等分散性が成り立たない場合でも,適用可能な手法が存在することを啓蒙的に知らせるべきことが指摘された。4.多くの手法の実際的な使い分けが必要であり,これについては現在も研究が進められているが,まだ充分でないことが確められた。なお,研究会での報告と議論の詳細は,別に発行する報告書に示しておいたのでそれを参照されたい。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Yoshimura,I.& Yang,R.“Multiple comparison procedures for animal experiments”,The third Japan−China Symposium on Statistics,1989,11.
吉村功“無影響量の評価法について”
1990年度。日本統計学会。講演。
黒木哲,広津千尋“変化点検出のための多重比較法”
1990年日本数学会年会講演
黒木哲,広津千尋,Hoyter,A.J.“累積カイ二乗の最大成分に基づく多重比較法”応用統計学Vol.18,No.3(1990)に掲載予定


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

安楽 和夫

西南学院大学

大橋 靖雄

東京大学

岸野 洋久

東京大学

岸本 淳司

(株)SASインスチチュートジャパン

木船 義久

武田薬品工業株式会社

佐野 正樹

大鵬薬品(株)

柴田 義貞

(財)放射線影響研究所

下井 信夫

ユックムス株式会社

高橋 行雄

日本ロシュ株式会社

滝沢 毅

日本ロッシュ株式会社

椿 広計

筑波大学

中里 薄志

雪印乳業株式会社

永田 靖

熊本大学

仁科 健

名古屋工業大学

橋本 修二

東京大学

長谷 文雄

日本ルセル(株)

半田 淳

日本化薬株式会社

松田 眞一

名古屋大学

松本 一彦

東洋醸造(株)

柳川 尭

九州大学

柳本 武美

統計数理研究所

吉田 道弘

武田薬品工業株式会社