平成252013)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

25−共研−1002

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

固体地球起源の大気変動現象を解明するための微気圧連続観測システムおよびデータ同化システムの構築

フリガナ

代表者氏名

ナガオ ヒロミチ

長尾 大道

ローマ字

Nagao Hiromichi

所属機関

東京大学

所属部局

地震研究所

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)のような大地震の発生時に、震源域や津波によって大気中に励起される地震音波は、高度方向には数十〜数百kmの電離層にまで、水平方向には最大数千kmの遠方にまで伝搬することが知られている。大気中の音波速度は津波の伝搬速度よりもずっと速いため、沿岸部における微気圧観測を強化することにより、津波の規模や到達時刻の情報を到達前に予測する「津波早期警戒システム」の実現に期待が寄せられている。

我々は、電気通信大学菅平宇宙電波観測所に設置した微気圧観測点に続き、本研究において京都大学潮岬風力実験所に第二となる微気圧観測点を設置し、2013年3月より連続観測を開始した。観測データは、VPNによって統計数理研究所に回収され、一次処理を施した後、ホームページより公開されている。また、この微気圧観測データとノーマルモード重合による地震音波伝搬の数値シミュレーションを融合するデータ同化計算を高速に実施する「地震音波データ同化システム」を開発した。本システムでは、主に震源に関するモデルパラメータを少しずつ変化させた複数の地震音波伝搬のシナリオを並列計算によって同時計算し、地震音波が微気圧観測点に到達した直後から、予め計算したシナリオと観測データをマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)によって同化させることにより、モデルパラメータの事後分布を算出する。

本システムの有効性を検証するため、遠州灘沖を震源とする東南海沖地震を想定した双子実験を実施した。双子実験はデータ同化アルゴリズムの正当性を検証するためによく用いられる手法であり、モデルパラメータにある真の値を与えた上で数値シミュレーションによって擬似観測データを算出しておき、データ同化によって真のモデルパラメータ値を再現できるかどうかを確認する。本実験では、仮想地震のモーメントマグニチュードを10の22乗Nm(マグニチュード8程度)、断層の長さを40km、断層破壊伝搬速度を2km/秒、震源の深さを10kmと仮定し、これによって菅平および潮岬で励起されるべき気圧変動を擬似観測データとした。双子実験の結果、真のモデルパラメータならびに気圧変動波形が再現されることに成功し、本システムの正当性を確認することができた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

[論文]
長尾大道, 樋口知之, 地震音波データ同化システムの開発 ?双子実験による検証?, 統計数理, Vol. 61, No. 2, pp. 257-270, 2013.

Nagao, H. and T. Higuchi, Data assimilation system for seismoacoustic waves, The Proceedings of 16th International Conference on Information Fusion, pp. 1372-1377, 2013.

[学会発表]
H. Nagao and T. Higuchi, Data assimilation system for seismoacoustic waves, The 16th International Conference on Information Fusion, Istanbul, Jul. 11, 2013.

長尾大道, 樋口知之, 地震音波データ同化システムの開発, 2013年度統計関連学会連合大会, 大阪大学豊中キャンパス, 2013年9月10日.

長尾大道, 冨澤一郎, 家森俊彦, 金尾政紀, 樋口知之, 固体地球起源の大気変動現象を解明するためのデータ同化システムの開発, 日本地球惑星科学連合2013年大会, 千葉(幕張メッセ), 2013年5月24日.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

家森 俊彦

京都大学

金尾 政紀

情報・システム研究機構 国立極地研究所

冨澤 一郎

電気通信大学