平成21（2009）年度　一般研究１実施報告書

 

課題番号

21−共研−1014

分野分類

統計数理研究所内分野分類

h

主要研究分野分類

3

研究課題名

ProteinDFによるタンパク質全電子計算と統計解析の研究

フリガナ

代表者氏名

サトウ　フミトシ

佐藤　文俊

ローマ字

Fumitoshi Sato

所属機関

東京大学

所属部局

生産技術研究所

職　　名

教授

 

 

研究目的と成果（経過）の概要

我々は、タンパク質のための密度汎関数(DF)法プログラムProteinDFを基に、タンパク質の統合的な量子化学計算シミュレーションシステムの開発を行っている。本プログラムは、Gauss型基底関数展開に基づいた密度汎関数法による、世界初のタンパク質全電子計算が可能なプログラムである。本研究では、活性中心近傍における生体触媒反応をはじめとする量子論に基づくタンパク質の反応・機能解析を行うことを目的とし、現在以下の研究に注力している。
(i) タンパク質第一原理ダイナミクスとその統計処理の研究
(ii) タンパク質波動関数データベース作成と統計処理の研究
　本年度の成果は以下の通りであった。
(i) 簡便な経験的力場を用いて高速かつ十分な分子シミュレーションを行い、得られた一部の構造に対してより正確な力場で解析しなおすことで、力学量の熱力学平均値を見積もる手法を研究・開発した。これにより効率的なタンパク質自由エネルギー計算が可能となる。真空中のペプチド鎖Alanine Tripeptideを用いてテスト計算を行った結果、経験力場から得られた自由エネルギーと本手法で得られたそれとの間で有意な違いが見られた。本手法が自由エネルギー解析として有効であることを示したものである。現在、本手法論文の投稿準備中である。
(ii) ProteinDFのハイブリッド並列を強化するとともに、B3LYP汎関数の高速化とvdW汎関数の実装を行った。これにより、様々な金属タンパク質の効率良く実用的な全電子計算が可能となった。このProteinDFを用い、実証計算として一酸化炭素結合型ミオグロビンやシトクロムc3、光合成反応中心タンパク質といった金属タンパク質の全電子計算を行っている。また、タンパク質全電子計算における各種交換相関汎関数依存性や基底関数依存性を評価するために、モデル化学の検討も行った。Mulliken電荷や密度行列要素を比較することで、各種汎関数の性質を特徴付けることができ、また計算時間と計算精度のバランスの良い基底関数を選択することができた。これらの計算結果はDBに登録し、構造・モデル化学などの面から波動関数のモチーフを見出したいと考えている。

 

当該研究に関する情報源（論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等）

【論文発表】
・ 平野敏行, 千葉貢治, 佐藤文俊, “タンパク質のための全電子密度汎関数法プログラムProteinDF”, 日本シミュレーション学会論文誌, 1 (2009) 50

【学会発表】
・ 恒川直樹, 佐藤文俊, “タンパク質系での高精度な自由エネルギー解析”, 第３回分子科学討論会2009 (名古屋)
・ 平野 敏行, 恒川 直樹, 佐藤 文俊, “ProteinDFを用いた光合成反応中心タンパク質の電子状態計算”, 日本農芸化学会2010年大会 (東京)
・ 平野敏行, 佐藤文俊, “タンパク質の全電子波動関数計算”, 第47会日本生物物理学会年会(徳島)
・ 平野敏行, 上村(西野)典子, 恒川直樹、西村康幸, 佐藤文俊, “光合成反応中心タンパク質複合体の密度汎関数計算”, 第３回分子科学討論会2009 (名古屋)
・ Kouji Chiba, Toshiyuki Hirano, Fumitoshi Sato, Masahiro Okamoto, “Full Quantum Calculation of Horse Heart Carbonmonoxy Myoglobin”, The 13th edition of the International Conference on the Applications of Density Functional Theory in Chemistry and Physics (DFT09) (Lyon, FRANCE)
・ N. Nishino-Uemura, T. Hirano, F. Sato, “The Study of Quasi-Canonical Localized Orbital Method for Huge Canonical Molecular Orbital Calculation”, The 13th edition of the International Conference on the Applications of Density Functional Theory in Chemistry and Physics (DFT09) (Lyon, FRANCE)

【ホームページ】
・ http://satolab.iis.u-tokyo.ac.jp/
・ http://www.ciss.iis.u-tokyo.ac.jp/

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上村　典子

東京大学

千葉 貢治

東京大学

恒川　直樹

東京大学

平野　敏行

東京大学