平成202008)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

20−共研−2053

分野分類

統計数理研究所内分野分類

h

主要研究分野分類

3

研究課題名

生物の個体群動態の数理モデルと統計解析

フリガナ

代表者氏名

ナカギリ ナリユキ

中桐 斉之

ローマ字

Nakagiri Nariyuki

所属機関

兵庫県立大学

所属部局

環境人間学部環境人間学科

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

120千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究は、生物個体群動態のデータ等から統計解析を用いてそのメカニズムを明らかにし、また、生物のモデルを構築し、その計算機シミュレーションを行うことによって、生物進化や適応問題および生態学の絶滅問題を数理解析的な手法で研究するものである。
今年度は、生態系の数理モデリングと格子モデルによるシミュレーションを用いて、生態学の絶滅問題と生物多様性の問題を研究してきた。
1)生物の個体群動態の研究
 格子ロトカ・ボルテラ模型を用いて、生息地破壊による個体群動態への影響を研究した。生息地破壊の効果について、モデル生態系を用いて解析を行った。餌-捕食者の2種系に、生息地破壊の影響を与えていくとき、生息地が破壊されるときの面積による影響と、生息地が分断化する影響、そしてその二つの相乗効果の3種類の影響を考えたモデルを構築した。このモデルについてシミュレーションによる解析を行ったところ、分断化の影響が重要であることがわかった。
2)モデル生態系を用いた生物多様性と共存の研究
 生物多様性の保全に対し関心が高まっているが、多様な生物種が共存するしくみについては不明な点も多い。そこで、局所的に生物種が共存するメカニズムについて、確率格子モデルなどによる研究を行った。また、植物プランクトンは数多くの生物の中でも種多様性が高いことで知られている。本研究では均質な環境下に数多くの種が共存するということについて、数理モデルによる解析を行った。2種類の生物種間での競争においては、従来、ケモスタット理論においては稀釈割合に依存しないとされてきた。しかし、本研究において行った藍藻と緑藻を用いた実験と数理モデルによる解析からは、2種類の生物間での競争においては、その希釈割合に依存するということがわかった。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Tatsuo Miyazaki, Tatsuya Togashi, Nariyuki Nakagiri, Yukio Sakisaka, Kei-ichi Tainaka, Jin Yoshimura, Do spatial effects appear at low dilution rate in chemostat?
Ecological Complexity, vol.6, p.191-196, 2009.

中桐斉之、吉村仁、泰中啓一
生息地破壊が個体群動態に及ぼす影響のパリティ則
日本個体群生態学会第二十四回大会, 東京都, 2008年10月

中桐斉之、吉村仁、泰中啓一
生息地破壊による長期的応答とパリティ則
第18回日本数理生物学会大会, 京都市, 2008年10月

田中裕美、中桐斉之、井口恵一朗、泰中啓一、吉村仁
密度との関係性から見たアユの縄張り形成と崩壊
第56回日本数理生物学会大会, 盛岡市, 2009年3月

由田太一、中桐斉之、泰中啓一、吉村仁
環境変化における最小生存個体数と絶滅:雌雄同体を考慮したモデル
第56回日本数理生物学会大会, 盛岡市, 2009年3月

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

志村 隆彰

統計数理研究所

田中 裕美

兵庫県立大学

南 美穂子

統計数理研究所

吉村 仁

静岡大学