平成182006)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

18−共研−2047

専門分類

8

研究課題名

犯罪統計データのコウホート分析

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

NAKAMURA, Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

50千円

旅 費

90千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

我が国は,世界の先進諸国の中では例を見ない,犯罪の少ない安全な国といわれてきた。しかしながら,全国刑法犯の認知件数は平成8年から7年連続して戦後最多を更新するなど,近年犯罪情勢は悪化の一途をたどっている。一般に,人間のライフサイクルの中で犯罪に陥る危険度は青少年期に最も高く,加齢とともに減少していくといわれているが,近年の高齢者犯罪は,高齢者人口の増加を上回る勢いで激増している。また,幼少期に戦争を経験した世代や出生人口の多い世代は,他の世代に比べて犯罪に陥る危険度が高いとの研究結果もあり,対策を十分に検討しておく必要がある。
そこで,本研究においては,戦後の日本の犯罪統計をコウホート分析し,年齢,世代及び時代の各要因について検討を加えることにより,将来,平和で安全な社会を築くために有効な対策について検討することを目的とする。
今年度においては,平成15年度から17年度までに統計数理研究所共同研究で実施した受刑者率及び犯罪検挙者率のコウホート分析を継続発展させ,昭和41年以降の39年間における少年刑法犯検挙者率について,男女別にコウホート分析を行い,年齢・時代およびコウホート効果を分離することによって,少年非行の変化の構造について明らかにした。
その結果,判明した事項は次のとおりである。
 1.時代効果
昭和40年代は男子が高水準,女子がやや低水準にあり,男女差が顕著に認められる。その後,
昭和50年代は男女ともおおむね高水準となったが,昭和60年代には男女とも低下傾向を示し,
平成5年前後に底を打った。以後は上昇に転じ,特に,女子は平成10年以降高水準にある。
2.年齢効果
男女とも9歳から13歳まで急上昇し,14歳から16歳まで高水準であり,17歳から19歳まで
は急降下している。ピーク時年齢は,男子が15歳,女子が16歳で,女子の方が1歳高い。
3.世代効果
男女とも,おおむね昭和20年代後半生まれから昭和30年代生まれまでの世代は低水準であり,
昭和40年代後半生まれから昭和50年代前半生まれまでの世代は高水準である。また,平成生まれ以降の新しい世代は,男女とも低水準である。
 4.コウホートサイズと非行少年率
コウホートサイズの大きい団塊ジュニア世代(昭和47年から昭和49年生まれ)は,他の世代に比べて高水準であり,CS仮説(非行少年率の増減は,その世代の出生人口母数の大小に影響されるとするEastelinの仮説)と一致する。
   今後は,殺人,強盗,傷害など主要非行名別の特質について,詳細な分析を行っていきたい。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1. 市川 守,中村 隆(2006). 非行少年率のコウホート分析, 犯罪心理学研究, 第44巻特別号, 80-81.(日本犯罪心理学会,兵庫県神戸市:神戸学院大学,2006/9/2)
2. 市川 守,中村 隆(2005). 犯罪検挙者率のコウホート分析, 犯罪心理学研究, 第43巻特別号, 92-93.(日本犯罪心理学会,北海道札幌市:北海道大学,2005/8/20)
3. 市川 守, 中村 隆(2004). 受刑者率のコウホート分析(II), 犯罪心理学研究, 第42巻特別号, 78-79. (日本犯罪心理学会, 東京都世田谷区:昭和女子大学, 2004/9/5)
4. 市川 守, 中村 隆(2003). 受刑者率のコウホート分析, 犯罪心理学研究, 第41巻特別号,18-19. (日本犯罪心理学会, 佐賀県神埼町:西九州大学, 2003/9/6)
5. 市川 守, 中村 隆(1992). 犯罪・非行者率に及ぼす時代・年齢・コウホート効果の分析(2), 犯罪心理学研究, 第30巻特別号, 12-13. (日本犯罪心理学会, 東京都文京区:東洋大学, 1992/9/12)
6. 市川 守, 中村 隆(1988). 犯罪・非行者率に及ぼす年齢・時代・コウホート効果の分析, 犯罪心理学研究, 26(2), 12-31.
7. 市川 守, 中村 隆(1988). 犯罪・非行者率に及ぼす年齢・時代・コウホート効果の分析,犯罪心理学研究, 第26巻特別号, 12-13. (日本犯罪心理学会, 東京都世田谷区:昭和女子大学, 1988/9/12)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催はありませんでした。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

市川 守

岐阜少年鑑別所