平成81996)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

8−共研−48

専門分類

5

研究課題名

各種数値法による高分子の臨界挙動の研究

フリガナ

代表者氏名

イシナベ タカオ

石鍋 孝夫

ローマ字

所属機関

山形大学

所属部局

工学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

分岐高分子は格子アニマルと格子トリーで、また環状高分子は多辺形でモデル化される。最近、石鍋はある特殊な格子アニマルの各サイトを、その裏格子の単位胞タイルで置き換えると、多辺形と小胞が得られることを見い出した。本研究では、この変換を利用して、上記アニマルを高速計算機で発生させ、多辺形と小胞の統計的性質を検討し、その臨界点と指数を推定しようとするものである。


フイルム状磁性体の表面磁化の問題と関連して、スリット内に拘束された高分子鎖の吸着転移から、磁性体のN-ベクトル・モデルの理論式を検討した。
まず、厚さDの一方の界面を発生するn-step Self Avoiding Walk (SAW)について、出発面と接触するstep数nのconfigurationをすべて計算機で数え上げる。
d=2 (2次元空間)ではn=28、d=3ではn=18まで求めた。そのデータから特定のDの値に対して、各nの比熱の最大値を定める(任意の桁まで求めることができる)。
この級数値のNeville表を作成し、更にそれをn-1に対してプロットする。これより各Dに対するキュリー点TC(D) が求まる。スケーリング式 ΔT=TC(D)-TC(∞)〜D-λ(D→∞)を導入し、λD=-logΔTC / logDを1/Dプロットしてシフト指数λを推定した。
結果はd=2ではλ=1.45±0.05である(d=3では級数不足のためλを推定できなかった)。ところで、BrayとMooreはN-ベクトル・モデルのくり込み群理論のε展開法により、λ=2-[(N+2)/(N+8)]ε+0(ε2)、ただしε=4d、一方NemirovskyとFreedはλ=2-[(N+2)/(N+8)]ε+0(ε,2)、ε,=3-dを導いている。
従って、N=0 (SAW)、d=2では、BrayとMooreの理論を支持している。
また、一種の配向格子であるManhattan格子上のSAWの数え上げを行い、SAWの内部接触mのconfiguration数と末端間距離を求めた。
それによると、θ点の指数γt =0.95±0.05、νt =0.622±0.060で、このことは非配向格子の値γt =8/7、νt =4/7とほぼ一致していることを示している。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1. T.Arae, T.Ishinabe Examination of the Critical Exponents of SAW on the Manhattan Lattice, Repfs.Prog.Polym.Phys.Jpn.40,1997
2. R.Takemori, T.Ishinabe Estimation of the Critical Exponents of Lattice Animal, ibid.40,1997

1. 大泉則一、石鍋孝夫 スリット内に拘束された希薄高分子鎖の吸着転移 高分子学会 '96.5.29
2. 新江 沢、石鍋孝夫 Manhattan Lattice上におけるSAWの臨界指数の推定 高分子学会 '97.5.24 (予定)
3. 竹森理恵、石鍋孝夫 Lattice Animalの臨界指数の推定 高分子学会 '97.5.24 (予定)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

2次元正方格子上に単位サイクルのみを許す周辺長l、サイクル数c のnサイトアニマルの全配位数を計算機により数え上げる。サイト-タイル変換の関係式 l = 2n-2(c-1) を用いると、l - 多辺形の配位数P(l)と面積an (a:単位胞面積) の小胞の配位数C(n,l)が求まる。Neville 表を用いる数値解析法により、P(l)の母関数の特異点(すなわち臨界点)と臨界指数、さらに分配関数から小胞の多重臨界挙動を検討し、そのクロスオーバー指数を推定して、スケーリング理論を検証する。特に、上記方法は計算機で直接、多辺形を発生させる際、環形成の条件のため、多量のサンプルを捨て去る無駄が無く非常に有効である。同様のことをモンテカルロ法によっても行う。研究目的にあるように,この研究を行うためには,発生させた格子の統計的性質を検討することが重要であり,このことを重点的に行う。また,モンテカルロ法のために物理乱数発生機を用いる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

新江 沢

山形大学大学院

大泉 則一

山形大学大学院

竹森 理恵

山形大学大学院

田村 義保

統計数理研究所