平成142002)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

14−共研−2049

専門分類

7

研究課題名

森林成長制御モデルの構築による循環型森林資源管理の経済分析

フリガナ

代表者氏名

ヨシモト アツシ

吉本 敦

ローマ字

Yoshimoto, Atsushi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

我が国における森林資源は、昨今の木材価格の低迷に伴い十分に管理されない状態になりつつあ
る。森林資源を取り巻く将来的な不確実要素には、木材価格のみならず、森林資源の成長に関する
ものなどがある。森林の成長は、例えば微気候の変動、樹木間の競争の変化、また人為的作業の介
入による成長の変動等に大きく左右され、将来的に不確実になる。
 これまで、不確実性を考慮した森林資源の分析では、木材価格の将来的な不確実性を考慮した確
率制御による経済価値評価モデルを構築し、価格の不確実性の森林経営に及ぼす影響について分析
を行った。しかしながら、分析対象は木材価格のみを扱っており、それゆえ実際の経営林を考慮し
た管理問題に直接適応することは困難である。すなわち、経済的な分析と物理的な成長分析の融合
により、直面する森林資源管理問題が解決される訳である。現在、林野庁では主伐を中心とした集
約的な森林管理型から、間伐を中心とした循環型森林資源管理への移行を模索している。その場合、
間伐の森林成長への影響を物理的及び経済的に評価し、循環型森林資源管理の実現への政策提言が
必要となってくる。
 本研究では、実際に伐採などにより経営されている林分を対象に間伐制御を考慮できる森林成長
モデルを検討し、循環型森林資源管理モデルの構築を主な目的とした。まず、成長モデル構築につ
いて、一般化多変量分散分析モデルの森林成長分析への適用可能性について分析を行った。福岡県
八女郡星野村において星野村所有の森林を対象にデータ収集を行い、分析を行った結果、ここで考
慮したモデルのあてはめ、最尤推定法による未知パラメーターの推定、成長過程の異なる林分にお
ける比較検定などの一連の分析結果より、林分成立過程の異なる様々な成長データへの一般化多変
量分散分析モデルの適用が適切であることが分かった。また、林木の成長データを用いて、成長傾
向に対する変化点探索法の構築を試みた。成長過程の変化点は、間伐などの制御により引き起こされ
るものと考えられる。分析の結果、考案した変化点探索法によりある程度の変化点の特定が可能で
あることが示唆された。しかしながら、間伐の強度などとの関連については更なる研究が必要であ
ることが課題となった。管理モデルについては、決定論的に提供されている密度管理図を用いて、
最適化フレームワークにのっとりモデルの構築を行った。さらに不確実性下の管理モデルを用いて
循環型森林資源管理の実現可能性について分析を行った。分析は経営持続のための最低許容価格の
探求により、どのような価格帯において循環が可能か否かを分析した。一般に経営は物理的な条件
に基づくゾーニングにより経営の状態が分類されてきたが、ここで導入した最低許容価格の探求に
より価格・費用という経済要因により経営の状態が分類できることが分かった。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表
柳原 宏和・吉本 敦、スギ林造林による素固定量の推定、「高次情報処理の統計的基盤」シンポジウム、
広島県、2003年1月9日〜10日
吉本 敦・柳原 宏和・能本 美穂、ランダム効果を伴う多変量非線形回帰モデルによる林分成長モデ
ルの推定、FORMATH TSUKUBA 2003 シンポジウム、茨城県、2003年3月8日〜9日
吉本 敦、最適確率制御モデルを用いた貿易自由化の森林資源管理への影響分析、FORMATH TSUKUBA 2003
シンポジウム、茨城県、2003年3月8日〜9日
二宮 嘉行・柳原 宏和・吉本 敦、林木直径成長データを用いた成長傾向に対する変化点探索法の構
築、FORMATH TSUKUBA 2003 シンポジウム、茨城県、2003年3月8日9日
論文
吉本 敦、2003、不確実性下による人工林施業の経済分析?ソフトゾーニング、統計数理
吉本 敦、2003、MSPATHアルゴリズムを用いた動的計画法による林分経営最適化モデル、統計数理
柳原宏和・吉本 敦、2003、一般化多変量分散分析モデルの林木直径成長分析への適用可能性、統計数

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

Heng Sokh

九州大学大学院

二宮 嘉行

九州大学

能本 美穂

九州大学大学院

柳原 宏和

統計数理研究所

行武 潔

宮崎大学