昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−87

専門分類

8

研究課題名

著者推定の数理統計学的研究−日蓮の三大秘法禀承事の真偽判定−

フリガナ

代表者氏名

ムラカミ マサカツ

村上 征勝

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

領域統計研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は,これまで数量的なとり扱いがほとんどなされていない,著作の真偽判定や著者の推定という,いわゆる“著者推定の問題”に対し,文体に関する数量的な情報を利用した数理統計学的解析法を確立し,文献学,書誌学の研究に新領域を開拓することにある。具体的には,現下の文献学的レベルにおいて真偽未決とされているが,しかし日蓮の実践的な仏教思想を理解する上で極めて重要な文献である『三大秘法禀承事』の真偽判定問題をとりあげその結論導出を試みる。


本研究は過去数年間継続しておこなっている研究であるが,昭和63年度の実施状況は以下の通りである。
1.「昭和新修日蓮聖人遺文全集」をテキストとして,解析に用いる50編の文献(日蓮著作24編,偽作16編,弟子の著作5編,真偽未決の文献5編),約17万語のデータのチェック及び修正を行った。特に仏教語の品詞分類のチェックを重点的におこなった。
2.文献の計量分析に必要な各種プログラムの開発を進めた。
3.テキスト間の異同及びその分析結果への影響を調べるため「昭和定本日蓮遺文」に基づくデータの作成を進めた。
4.文献の計量分析に関する内外の文献を収集し,分析法に関する研究をおこなった。またその概要をまとめ数学セミナー等の雑誌に発表した。
5.共同研究費による研究会を開催し,研究情報の収集を計るとともに今後の研究方法等について討議した。
当初研究目的である真偽判定に関する計量分析には入れなかったが,最もやっかいなデータのチェックは今年度でほぼ終了した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文等
4.著者推定問題の数理統計学的研究
1.クラスター分析 パソコンによるデータ解析(朝倉書店)
2.文献の計量分析 投計情報37巻11号
3.著者はだれか? −計量文献学への招待1〜5−
数学セミナーVol27,No.11,12,Vol28,No.1,2,3
学会発表等
1.文体の統計分析 日本統計学会
2.日本語文献の計量分析 分類の理論と応用に関する研究会
3.日蓮の文体の計量分析 文献情報のデータベースとその利用に関する研究会


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

昭和55年に,『三大秘法禀承事』及び日蓮の著作17編,偽作8編の計26編の文献(約8万語)に基づく研究の中間報告をした。その際,解析に用いた文献数が26編と少ないこと,主語,述語等の構文に関する情報が欠けていること,解析に用いた既存の統計手法の使用に問題があることなど,いくつかの問題点が明らかとなった。そこで,この数年来,解析すべき文献を24編追加するとともに,構文に関する情報を追加すべくデータの作成を続けるとともに,このような多次元情報を利用した著者推定問題のための新しい数理統計学的手法の開発を試みてきた。昨年までに50編の文献(約17万語)のデータのローマ字表記から漢字カナ表記への変換及び,そのチェックを終了したので,今年度は構文情報に関するデータの入力を続けるとともに,この問題の真偽判定に関する本格的な解析へ入る。
ところで,この研究はその性質上,仏教学,言語学,心理学等の専門知識が必要であり,したがって統計学の研究者を中心に,これらの分野の研究者と協力して研究を進めることが不可決である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 瑞叡

立正大学

春日 正三

立正大学

古瀬 順一

群馬大学

藤本 煕

明星大学

安本 美典

産能大学

山元 周行

 

米田 正人

国立国語研究所