平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2011

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

磁力線振動周波数とGPS-TECの同時インバージョンによるプラズマ圏密度全球分布推定

フリガナ

代表者氏名

カワノ ヒデアキ

河野 英昭

ローマ字

Kawano Hideaki

所属機関

九州大学大学院

所属部局

理学研究院・地球惑星科学部門

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

45千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

地球のまわり、電離層の外側には、プラズマ圏と呼ばれる領域が広がっている。この領域は、地球磁力線に沿って電離層から流れ出したプラズマによって満たされている。このプラズマ圏のダイナミックな変動の様子を調べる事は磁気圏物理の重要なトピックであり、その為に、プラズマ圏プラズマの密度の3次元分布を知る事は重要である。

その密度分布を知る為の方法の一つに、GPS-TEC (下に説明) のデータを使用する方法がある。GPS (Global Positioning System) 衛星は、現在全30機同時運用されており、地球に向けて電波を送っている。それを地上の観測点や低高度衛星で受信すると、衛星〜観測点を結ぶ線上でのプラズマ電子密度の積分量: TEC (Total Electron Content) を求められる。

一方、別の方法として、地上での磁場観測データを使う方法もある。すなわち、地球磁力線が振動すると、それを地上磁力計で観測する事ができ、その振動の周波数(磁力線振動周波数、以下 f とする)が得られる。そして、その f は、磁力線の「重さ」、すなわち「磁力線に沿ってプラズマ質量密度を積分した値」(この量を以下 M とする) と逆相関の関係にあるので、磁力計で観測した f から M が推定できる。

以上の2種のデータが与えるのは、求めたい3次元プラズマ密度分布に対して、異なる方向に沿っての積分値である。すなわち、GPS-TEC データでは衛星と受信機を結ぶ直線上の積分値、地上磁場観測データでは地球磁力線沿いの積分値である。本研究の目的は、f のデータセットと GPS-TEC データセットを組み合わせて、両データの特性を生かしたトモグラフィー的手法によってプラズマ圏プラズマ密度3次元分布を推定する事である。

上記推定の為の方法論は既に考案済みで、その妥当性の確認の為、その双子実験的手法によるテストを行った。平成23年度には、最も簡単なケースとして「プラズマ圏中の一点のみ密度が未知である」と想定して、その一点の密度値を任意に規定し、その値を上記方法で正確に求められるかテストした。その結果は成功であった。

続いて、平成23年度から24年度にかけて、密度未知の点を2点に増やした。その2点は1本の磁力線に沿っており、第1点は地球から最も遠い位置、第2点は磁力線が地球を離れてすぐの位置、に設定した。これには上記のテストの継続という意味に加え、磁力線上の位置による f 項と GPS-TEC 項への寄与比率の違いを調べる意味もあった。

その結果としては、まず、双子実験的手法によるテストは2点でも成功した。次に、第1点の密度を n1、第2点の密度を n2 として、「n1 は主として f 項が、n2 は主として GPS-TEC 項が、決める」と判った。つまり、f と GPS-TEC の性質から、上記の式において、「f 項は地球から遠くで効く」「GPS-TEC 項は近くで効く」と自然に重み付けがなされているようである、と判った。

その後、上記のチェックの為、密度未知の点を更に1点追加した。この第3点の位置は第1点と第2点の間、磁力線が赤道面から最も離れる点に設定した。この3点を用いた双子実験的手法によるテストも成功し、また、第3点での密度 n3 が f 項に与える影響は n1 ほどでは無いが有意に認められた。これは上記の2点による結果と consistent である。

平成25年度にはまた、この方法を適用する事が有用であると考えられる磁気圏内での現象についての予備調査を行った。その結果、プラズマ圏の外側の領域で、磁力線に沿って局所的に密度が増大している現象が報告されていたが、その観測に似せた条件で模擬実験を行ったところ、この方法でその現象を同定するのは精度がぎりぎり(背景成分に対して変動成分が最大〜1%)である事が判った。その後、この方法がより有効である(高密度の為)プラズマ圏について、密度の局所的極大/極小が見られる現象の報告例を調査中である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

河野英昭、上野玄太、中野慎也、才田聡子、樋口知之、磁力線固有振動数とTECの同時インバージョンによる磁気圏密度分布推定、統計数理研究所研究集会「電離圏・磁気圏モデリングとデータ同化」、名古屋大学太陽地球環境研究所、2014年3月4日。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

(開催しなかった。)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

才田 聡子

情報・システム研究機構

中野 慎也

統計数理研究所

樋口 知之

統計数理研究所