平成252013)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

25−共研−4207

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

7

研究課題名

信用リスクデータの統合化と解析方法の開発

重点テーマ

ファイナンスリスクのモデリングと制御

フリガナ

代表者氏名

ヤマシタ サトシ

山下 智志

ローマ字

Yamashita Satoshi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

78千円

研究参加者数

12 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

金融リスクには市場リスク、信用リスク、オペレーショナルリスクがあり、銀行をはじめとする金融機関の最も大きなリスク要因は信用リスクである。信用リスクの計量化方法には確率論を元にした構造モデルと、経済均衡を元にした誘導モデル、実績データをもとにした統計モデルが存在する。現在、金融機関のリスク管理では、統計モデルによる信用リスク算出が主流であり、実績データの蓄積と有効な統計モデルの構築が進められている。
本共同研究は、信用リスクに関するデータベース構築の方法論と、統計モデル構築の方法論を構築するものであり、以下の論点を対象とした。
1. 債権回収率の統合データベースの構築と推計モデルの開発
従来の信用リスク推計はデフォルト確率の推計に特化したものが一般的である。しかし貸手の損失はデフォルト後にどの程度債権を回収するかに依存する。地方銀行5行の協力を得て、実績回収率データを入手することにより、信用リスク全体の計量化=期待損失推定を行った。
2. 大規模信用リスクデータベースの標準化
中小企業の財務データベースは欠損値や異常値が多く、分析を行うときにはその処理作業が膨大である。それが統計モデルの発展を妨げている。本研究では欠損値異常値の前処理を合理的に行い、財務データ特有のデータベース標準化方法を確立するべく研究を行った
3. 景気変動を考慮した信用リスクモデルの構築
景気変動は信用リスクに影響を与えることは広く認識されている。その影響を「企業の悪化」と「与信の厳しさ」に要因分解をおこない、景気変動と信用リスクの構造を明らかにした。
4. 確率プロセスモデルを利用した信用リスク計量化手法の高度化
 確率プロセルモデルは信用リスクのプライシングにおいて多用されていたが、リスク管理における計量化手法としての利用は多くない。本研究ではこれまで培われてきた確率プロセルモデルをデータ分析の視点から高度化し、動的な信用リスク計量化を試みる。
これらのテーマは相互に関係しており、それぞれで得た知見を有機的に組み合わすことによってさらに高度で実務的に有用なアウトプットを創出した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1) Yamashita, S. and Yoshiba, T. (2013) A collateralized loan's loss under a quadratic Gaussian default intensity process, Quantitative Finance, No.13-vol.7, 981-996, doi: 10.1080/14697688. 2012.762459.
2) Yamashita, S. and Yoshiba, T. (2013) Analytical solution for the expected loss of a collateralized loan: A square-root intensity process negatively correlated with collateral value, Journal of credit risk, Vol.9, No.2, 135-156.
3) 山下智志, 田上悠太 (2013) デフォルト企業の正常復帰確率に関する実証分析, Research Memorandum, 1172.
4) Yamashita, S. and Yoshiba, T. (2013) Analytical solutions for variance of loss with an additional loan, Research Memorandum, 1171

学会発表等
1) Yamashita, S. (2013) 統計数理研究所リスク解析戦略研究センターにおける計量行動分析, 日本行動計量学会(招待講演).
2) 宮本道子, 安藤雅和, 逸見昌之, 山下智志, 高橋淳一 (2013) 中小企業大規模財務データベースの分布を考慮した欠測処理について, 2013年度 統計関連学会連合大会(一般講演).
3) 高橋淳一, 山下智志 (2013) 信用リスクデータベースの決算データに対するKNN法による欠損値補完, リスク解析戦略研究センター特別研究集会 「信用リスクデータベースの分析法とその展開」(招待講演).
4) 山下智志, 高橋淳一 (2013) 大規模信用データベースにおける欠損値(シグナル)補完の方法論と実例, 第2回金融シンポジウム(一般講演).
5) 山下 智志(2013)高度信用リスクデータベースコンソーシアムにおける 先進的信用リスク計量化モデルの開発と実装(招待講演),ワークショップ:社会のイノベーションを誘発する情報システム
6) 山下 智志 (2013)リスク科学における統計・数理科学の横断的役割(招待講演), 2013横幹連合コンファレンス
7) 大野 忠士, Financial Stress (Liquidity Crisis) Prediction Model:Twenty-fifth Asian-Pacific Conference on International Accounting Issues/2013-11-10--2013-11-13, 2013-11
8) 大野 忠士, フィナンシャルストレス予測モデル, 2013年度統計学会連合大会/2013-09-08--2013-09-11, 2013-09
9) 大野 忠士, ファイナンシャルストレス予測モデル:流動性指標による倒産予測
研究・技術計画学会 九州・四国支部 第6回研究会/2013-11-17--2013-11-17, 2013-11
10) 大野 忠士, フィナンシャルストレスの予測モデル, 第2回金融シンポジウム ファイナンスリスクのモデリングと制御/2013-11-05--2013-11-06, 2013-11
11) 大野 忠士, 流動性危機予測モデル, 日本金融・証券計量・工学学会(JAFEE) 2013夏季大会/2013-08-04--2013-08-05, 2013-08

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。
特別研究集会 「信用リスクデータベースの分析法とその展開」, 2013.5.30, 統計数理研究所, 12人
第2回金融シンポジウム「ファイナンスリスクのモデリングと制御」, 2013.11.5-6, 学術総合センター, 106人

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

安藤 雅和

千葉工業大学

大野 忠士

筑波大学

川崎 能典

統計数理研究所

佐藤 整尚

統計数理研究所

津田 博史

同志社大学

西山 陽一

統計数理研究所

逸見 昌之

統計数理研究所

三浦 良造

一橋大学(2012年3月まで) 統計数理研究所統計思考院外来研究員

宮本 道子

秋田県立大学

吉羽 要直

統計数理研究所