昭和611986)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

61−共研−1

専門分類

1

研究課題名

確率論における極限定理の研究

フリガナ

代表者氏名

コウノ ノリオ

河野 敬雄

ローマ字

所属機関

京都大学

所属部局

教養部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

確率論・統計学の基礎研究として重要な極限定理について,昭和60年度のグループ共同研究に引き続き研究することを目的とする。60年度では極限定理の新しい観点からの見直し,最近の動向の総括を行い,新しい極限定理の可能性をさぐったが,61年度は,それらを数学的に定式化し,厳密な証明を試み,更に統計学その他への応用の可能性を考える。


研究課題について相互に情報を交換し合って研究を進めていたが,共同研究者全員で直接討論をするため昭和62年2月統計数理研究所において研究集会を催した。以下はその内容である。
1.笠原(筑波大数学系)(Weighted sums of i.i.d.rand on variables atracted to log fractional stable process)α次安定分布に牽引されるi.i.d.列{〓}の関数型極限は勿論D〔0,1〕の分布の意味でα次安定過程{〓(t)}に収束する。さらにmoving average 〓を考えると適当な条件の下にいわゆるfractional stable process

に収束することが昨年度の研究成果として知られていた。ここで,重要な仮定はr≠0である。(さらに0<r+1/α<1は仮定してある。)r=0に相当する場合がないかというのが今回の研究課題である。結論的に言えば,そのような場合が存在して極限過程は

と表される。ここで,α=2の場合はBrown運動に他ならないが(〓とは異なる)1<α<2の場合は1次元分布はα−stableでself−similarityは1/αであるがα−次安定過程ではない。つまり独立増分過程ではない。
2.佐藤(名大教養,あるクラスの無限分解可能分布について)一次元無限分解可能分布(その全体をIDで表す)がいつunimodalになるかについて古典的結果はいろいろ知られている。Modgyessy,Wolf等の結果を中心としたremarkである。現在までにID〓UID〓UP〓L〓L∞〓stable,ID〓M〓UP(UP=〓>0がUnimodal)等の包含関係が知られている。又,多次元分布の場合には完全ではないがいろいろ研究されている。
3.河津(山口大教育,Random walk in random enuironment)物理現象の数学モデルとしてSinai以来急速に発展してきた分野でGolsou,H.Tanaka等最新の結果を中心とした解説と今後の研究方向についてのコメント。
4.森(横浜市立大文理,Method of moments in the functional C.L.T.)モーメントの収束から中心極限定理を証明する方法はよく知られているが,multiplicative systemについてこの方法を適用してfunctional typeの中心極限定理を証明した。
5.安芸(統数研)統計量がBrown運動またはBrownian bridgeのfunctionalに収束することを利用した検定の問題があり,そのためにはこれらのfunctionalの分布のTailのオーダを知る必要がある。Brown運動とBrownian bridgeにおいて知られている多くのfunctionalの分布の対数は〓の係数が2倍だけ異なるだけである。この事情は一般的に証明できることであるかどうか問題提起した。一般的に証明できるかどうかは別にして,少なくとも〔0,1〕でのBrown運動の分散の最大値は1であるのに対してBrownian bridgeの分散の最大値は1/2であることが反映しているとの指摘があった。
6.河野(京大教養,心理学に現れる確率モデルについて)従来言われている非決定的モデル=確率モデルが必ずしも正確ではなく,パラメーターを決定すればランダムネスが無くなるモデル,例えば線形回帰モデル等は決定論的モデルであることを指摘した。その上で心理学でよく知られたLuceの選択公理をもとにしたモデルとJhurstonモデルを統一的にとらえる確率モデルについて論じた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Y.Kasahara,M.Maejima and W.Vervoat;
Log−fractional stable processes.Technical Report No.177(March 1987).
Center for stochastic processes.Department of Statistics,University of North Carolina.


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

確率論・統計学の基礎研究として重要な極限定理について,昭和60年度のグループ共同研究に引き続き研究することを目的とする。60年度では極限定理の新しい観点からの見直し,最近の動向の総括を行い,新しい極限定理の可能性をさぐったが,61年度は,それらを数学的に定式化し,厳密な証明を試み,更に統計学その他への応用の可能性を考える。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

安芸 重雄

大阪大学

笠原 勇二

お茶の水女子大学

河津 清

山口大学

佐藤 健一

名古屋大学

清水 良一

統計数理研究所

前島 信

慶應義塾大学

森 俊夫

横浜市立大学