平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−33

専門分類

3

研究課題名

開放型ミクロ・シミュレーション・モデルの研究−人口変動機構の解明をめざして−

フリガナ

代表者氏名

スギトウ シゲノブ

杉藤 重信

ローマ字

所属機関

椙山女学園大学

所属部局

人間関係学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

10 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は、まず小集団における人口変動を基礎的データとしてミクロ・シミュレーション・モデルの構築を目指すことにある。人口集団は孤島などの特殊例をのぞき基本的に外社会に対し開かれている。そこで本研究ではプログラミング環境としてUnixを用いることを前提とし、小集団間における人口移動もふくむ開放型のシミュレーションの開発を試みる。


本研究の目的は、小集団における人口変動に関するミクロ・シミュレーション・モデルの構築をめざすことにある。本研究ではオーストラリア・アボリジニの婚姻組織の事例を中心に分析をおこなった。
東アーネムランドのヨロンゴは、アボリジニの中でも最も複雑な婚姻規則をもつことで知られている。かれらは、命名された8分の婚姻クラス組織をもち、さらに婚姻相手を二通りに規定することであたかも16分の婚姻クラスであるかのようにみえる。
ところで、ヨロンゴの周辺には、婚姻クラスをもつ人びとが分布している。その範囲は、西は、西オーストラリア北部のキンバリーとブルーム地域から、南は中央砂漠北部、東はカーペンタリア湾西岸におよぶ。この範囲の中には、8分の婚姻クラスをもつアランダやカラジェリ、4分の婚姻クラスをもつカリエラも含まれている。
これまでの代表者らによるヨロンゴに関する親族調査によれば、ヨロンゴの婚姻規則は、解釈によってはレヴィ=ストロースのいう16分のクラスにみえるが、実態は8分や4分、2分のクラスとしても機能していることが明らかになってきている。
また、隣接のギジンガリは、8分の婚姻クラスをもち、クラスの名称もほぼヨロンゴと同一であるにもかかわらず、名称のうえでの婚姻可能な婚姻クラスがずれている。ヨロンゴの潜在的なクラス組織や、ギジンガリなど周辺の人びととの通婚にあたっては、婚姻規則の「読み替え」が行われる。その結果、一時的に、規則に適合するかのようにみえるが、実際には「読み替え」によって、「本来の」婚姻規則からのズレが増幅されることになる。
人口変動のミクロ・シミュレーションのモデル構築の際、十分に考慮にいれる必要のあるのは、以下の諸点であることが明かとなった。(1)人口現象を規定する諸規則の地域差とその広がりの評価、(2)諸規則の拘束力(100%の拘束力はありえない)の評価、(3)非結合的代数によるランダムな衝突モデル(伊藤)や格子モデル(泰中)との整合、(4)新たな数理モデルの発見。今後とも、これまでの研究成果をふまえて、人口現象に関するミクロ・シミュレーション・モデルの構築を期したい。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

木下太志、東北地方一農村の世帯の変遷:1760-1870、第45回日本人口学会、93・6・5
杉藤重信、オーストラリア・アボリジニ社会文化の現状、第8回くに荘セミナー、93・8・28

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

小集団の人口変動を対象とする場合、人口学的パラメータを全体として規定する(マクロ・シミュレーション)と、そのダイナミックな様相を再現することが困難である。むしろ、個別的なパラメータを用いたミクロ・シミュレーション(個人の行動レベルを単位とする)を用いることが重要である。
本研究では、過去の研究成果に基づき、ミクロ・モデルでのシミュレーションの完成をめざす。また、人口空間は開放的であるので、プログラミング環境としてUnixを使用することを前提として、シミュレーション・プログラムをUnixの「プロセス」として位置づけ、開放型のシミュレーションを実現する。また、人文系と理工学系の研究者との連携がシミュレーション・モデルの作成や再検討にとってきわめて重要であるので共同研究を行うものである。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 栄明

統計数理研究所

海野 道郎

東北大学

木下 太志

江南女子短期大学

久保 正敏

京都大学

小島 三弘

総合研究大学院大学

小山 修三

国立民族学博物館

田辺 國士

統計数理研究所

田村 義保

統計数理研究所

西山 賢一

国際大学