平成81996)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

8−共研−89

専門分類

7

研究課題名

分裂病患者の大脳皮質ネットワーク機能異常に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ウチダ スナオ

内田 直

ローマ字

所属機関

(財)東京都精神医学総合研究所

所属部局

精神生理部門

職  名

主任研究員

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

大脳の活動は大まかに部位を分けて脳波で測定することができる。その脳波の部位別の関連を見ることで、全体としての脳がどのように働いているか伺い知ることが出来る。本研究は、各部位の脳波の時系列の中での相互関連を見ることにより正常者と比較し分裂病者で脳の働きがどのように異常なのかを知ることを目的としている。


精神分裂病の思考障害等の異常を、大脳皮質の統合活動の異常という点から脳波を用いて明らかにすることを目的として研究を開始した。今年度は、正常者を対象として、どういった脳波の成分が大脳皮質の統合活動と関連があるかを明らかにすることを目的とした。
頭皮上から記録される脳波は、筋電図等の混入が多いため、脳波と同時に大脳皮質に直接装着した電極からの記録(皮質脳波)も行った。皮質脳波は手術のための脳外科の患者に承諾を得て行った。
また、覚醒時の課題遂行と平行して、終夜睡眠の脳波も用い、特に睡眠中大脳皮質が活動し、記憶等と関連があるといわれているREM睡眠期の脳波についても検討した。脳波の解析には統計数理研究所の瀧沢らの開発した瞬時化最大エントロピー法(IMEM)を用いた。IMEMの応用に当たっては、脳波の特性に合わせたフィルタ、IMEMの次数等を検討した。
その結果、IMEMが睡眠、覚醒を含む様々な脳波の活動の周波数分析に非常に適した方法であり、脳波の様々な波形をより詳細に記述できることがわかった。
次に、IMEMをREM睡眠期の脳波に適応したところ、比較的安定した25Hz前後の成分がREM睡眠期に出現していることが明らかになった。また、この周波数の波は覚醒時にもみられ、覚醒時には海馬に装着した電極からも記録されるため、高次脳機能に関連した波であると考えられた。
今後、ノイズ寄与率等の方法を用いて、複数の電極間の関連について明らかにしてゆく。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

-Uchida S.,Takizawa Y.,Hirai N. and Ishiguro M., "Human sleep electroencephalogramanalysis based on the Instantaneous Maximum Entropy Method,"IEICE Trans.on Fundamentals, Vol.E80-A,No.6,June 1997.
-Uchida S.,Hirai N., "EEG Oscillations in human sleep and their Physiological significances. "Excerpta Medica International Congress Series,III Pan-Pacific Conference on Brain Topography, Tokyo,Ed.Yoshihiko Koga, Elsevier Science B.V.Amsterdam[in print]

-Uchida S.,Hirai N., "High frequency EEG oscillations during human REM sleep and their physiologicla significances,"III Pan-Pacific Conference on Brain Topography, 4/1-4/1997, Urayasu.
-Uchida S.,Takizawa Y.,Hirai N.and Ishiguro M., "High frequency EEG oscillations in Human REM sleep"Association of Professional Sleep Societies, 11th Annual Meeting 6/10-15/97, San Francisco

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

正常者および分裂病者に情報処理課題をあたえ、同時に頭皮上20部位から脳波を記録する。情報処理課題は、体性感覚、視覚、聴覚などいくつかの種類を用いる。得られた20部位からの脳波について、情報処理に関連しているという速い成分(30-100Hz)について、AICをもちいて脳波の定常部分の切り出し(segmentation)を行う。そして、正常者の切り出された部分について、周波数帯域間の整合性(各周波数で同じ様な部位が切り出されているのか)、各周波数内での部位間の相互関連について検討する。ついで、分裂病者にも同様の操作を行い正常者との差異を抽出する。実験により得られた時系列データの解析については、統計数理研究所において最先端の研究を行っており、共同研究が非常に有効である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

緒方 茂樹

(財)東京都精神医学総合研究所

瀧澤 由美

統計数理研究所

平井 伸英

東京医科歯科大学大学院