昭和611986)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

61−共研−30

専門分類

5

研究課題名

ランダムな構造を持つ系における相転移の可能性とそのモンテカルロ法

フリガナ

代表者氏名

タネムラ マサハル

種村 正美

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ランダムな空間構造やつながりを持ち,且つ内部自由度(スピンと呼ぶ)を持つ系において,スピン配列の状態が構造のランダムネスとどう関わっているかは統計物理学の分野で重要な問題とされている。本研究ではスピン配列の秩序状態の形成,即ち相転移の生ずる可能性とその条件を構造のランダムネスとの関係に力点を置いて調べたい。また,そのための計算機シミュレーションの有効な手法について研究する。


昨年度に引続き,本研究を行った。我々は具体的には[i]アモルファス反強磁性イジングモデル,[ii]ランダムボンドXYスピンモデルの問題に取り組んでいるが,本年度は[ii]の研究に力点を置いた。我々のモデルを記述するハミルトアンの一般形は,〓=ΣΣ〓・〓−hΣ〓である。このような内部自由度を持つ系は従来より統計学者が空間パターンの統計の問題として議論しており一般性のある問題である。
スピンがXY平面の格子点上で回転する場合は,ボンド〓が±〓の値をランダムに取るときフラストレーションが現れる。それには符号を含めてカイラリティという量で特徴づけられる。計算機シミュレーションにより,このモデルにおいてスピンの向きに関する相転移は存在しない代わりに,カイラリティに関する新しい相転移を示唆する現象が確認された。この可能性は昨年度の研究で既に見いだしていたが,今年度の研究でさらに詳細な計算機シミュレーションを行って確認した。また,実験的に示されているいわゆるリエントランス現象がシミュレーションによって得られ,我々はこの現象の原因がスピンの渦巻が凍結することにあることを指摘した。
我々の研究は米国物理学会の総合報告誌Reviews of Modern Physics,Vol.58 No.4にいち早く紹介され,1986年8月米国ボストン市で開催された統計力学国際会議での我々の発表も評判を呼んだ(日本物理学会誌(1987),Vol.42,No.372,p.372参照)。また,リエントランス現象に対する我々の仮説を支持する実験的研究も発表された。
共同研究者である川村の在外研究のため,62年度は申請出来なかったが,今後も引き続いて,本共同研究を進展させていくことが強く望まれる。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Kawamura,H.& M.Tanemura(1986):Reentrance Phenomena in the Two−Dimensional XY Spin Glass.J.Phys.Soc.Japan,Vol.55,No.6,pp.1802−1805.
Kawamura,H.& M.Tanemura(1986):16−th International Conference of Thermodynamics and Statistical Mechanics(STATPHYS 16);August 11−15,1986 Boston,USA.
Kawamura,H.& M.Tanemura(1987):Physical Review Letters,投稿中。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

ランダムな空間構造やつながりを持ち,且つ内部自由度(スピンと呼ぶ)を持つ系において,スピン配列の状態が構造のランダムネスとどう関わっているかは統計物理学の分野で重要な問題とされている。本研究ではスピン配列の秩序状態の形成,即ち相転移の生ずる可能性とその条件を構造のランダムネスとの関係に力点を置いて調べたい。また,そのための計算機シミュレーションの有効な手法について研究する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川村 光

大阪大学