平成172005)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

17−共研−1023

専門分類

7

研究課題名

膜電位イメージング情報からの機能的神経回路網の再構築

フリガナ

代表者氏名

オク ヨシタカ

越久 仁敬

ローマ字

Oku Yoshitaka

所属機関

兵庫医科大学

所属部局

生理学第一講座

職  名

教授

所在地

TEL

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E-mail

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研究目的と成果(経過)の概要

目的:本研究の目的は、膜電位イメージング時系列パターンの多次元自己回帰モデルによる解析によって、計測時に機能している神経回路網の構造推定を行うことである。脳細胞(ニューロン)の活動は、細胞膜の電位変化として観測される。従来の電気生理学的方法では、1個〜少数のニューロンからしか活動が同時に記録できなかったが、最近の光エレクトロニクスの進歩により、光学的に膜電位変化の多点同時計測が可能になってきた。我々は、ラットの脳幹脊髄摘出標本あるいは脳スライス標本から自発的な周期性の神経活動である呼吸中枢活動を光学的膜電位計測し、多次元自己回帰モデルによる解析を試みた。具体的には、呼吸リズム生成に重要な役割をしていると考えられている2つのペースメーカー領域、pre-Bötzinger領域(pre-BötC)と傍顔面神経核領域(para-facial respiratory group; pFRG)の解析を行った。

方法:1)膜電位計測 新生ラット(P0〜P4)の脳幹・脊髄を取り出し、膜電位感受性色素(di-2-ANEPEQ)で染色後、灌流チャンバー内に固定する。蛍光顕微鏡下で緑色励起光を照射し、膜電位変化に応じて発する赤色蛍光を超高速高感度CCDカメラで観測する。呼吸活動は、第4頚髄前根(C4VR)から吸引電極により記録する。このC4VRをトリガーとしてトリガー前1280ms〜トリガー後3840msの蛍光変化を100x100 pixelの空間解像度で記録する。サンプリング速度は20ms/frameとした。
2)自己回帰分析法 2-a) C4VR活動時系列に対して自己回帰モデルをあてはめ、観測野の1点の膜電位時系列を説明変数として入れた場合のAICの変化を全ピクセルについて計算し、pseudocolor mapで表現した。2-b) 膜電位時系列に対して自己回帰モデルをあてはめ、pre-BötCおよびpFRG領域から代表点を各1点選び、その点の膜電位時系列を説明変数として入れた場合のAICの変化をpseudocolor mapで表現した。2-c) pre-BötCおよびpFRG領域を代表点する各1点の膜電位時系列に対して自己回帰モデルをあてはめ、他のピクセルの膜電位時系列を説明変数として入れた場合のAICの変化を全ピクセルについて計算し、pseudocolor mapで表現した。

結果:2-aの解析結果のみ、生理学的に解釈可能な結果が得られた。即ち、イメージ上の1ピクセルの膜電位変化をC4VR活動ARモデルの説明変数としてモデルに入れた場合のAICが低かった領域として、pre-BötCおよびpFRG領域が抽出された(左図)。このことは、pre-BötCおよびpFRG領域が呼吸リズム形成に重要な領域であるという生理学的知見と一致する。

今後は、AICが低かった領域内での関係、因果性をさらに自己回帰モデルを用いて検討する。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

2006年日本神経科学学会にて発表予定。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

該当なし。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

田村 義保

統計数理研究所

三分一 史和

千葉大学