平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−44

専門分類

5

研究課題名

スピン系及びフラクタルの計算機実験

フリガナ

代表者氏名

オノ イクオ

小野  郎

ローマ字

所属機関

日本女子大学

所属部局

理学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

統計力学の中の単純な多体問題であるスピン系の相転移と、フラクタルの現象に興味を持っている。どちらも解析的な方法よりも計算機実験による研究が盛んに行われている分野である。従来の統計力学の模型に対する知識を出発点として、それを拡張した模型の未知な現象を計算機実験によって調べたい。


正方格子上の2次元6状態一般化クロック模型の相転移を、モンテカルロ法によって調べた。コステリッツ−サウレス相、2回対称性の強磁性相、通常の格子上では等方的、2副格子上では異方的な対称性の破れを示す相などを含む相図を見出した。
立方格子上の3状態強磁性ポッツ模型が1次相転移であることを示し、相転移温度を得た。擬2次元イジング模型の有限サイズ・スケーリングを議論し、モンテカルロ法で確かめた。
微生物の凝集体の成長を、栄養物が凝集体に付着してからの成長の遅れや集餌効果を取り入れて、その形態変化を調べた。
粉体振動層の数値的研究を行った。流動場での空間フーリエ・スペクトルが波数kに対して-5/3乗の依存性を持ち(これは3次元一様等方性乱流)、速度場の大きさ分布関数が非ガウス型(熱対流の乱流で観測される)なので、粉体振動層は乱流層である。
自己組織化臨界現象をより現実化したサンド・パイル模型で調べた。臨界指数は以前の模型のものとは異なる。
強磁性に限らない一般の秩序に共役な境界条件を提案し、転送行列法で界面自由エネルギーを計算してランダム・イジング系の相転移を調べた。
顆粒状の超伝導体を固めた系を記述するゲージ・グラス模型の相転移を、ゲージ変換理論で解明した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

上野・加園'Incompletely Ordered Phases and Phase Transitions in the Three-Dimensional
General Clock Models'Phys.Rev.B48(1993)16471
山縣'Interfacial adsorption phenomena of the three-dimensional three-state Potts model'J.
Phys.A26(1993)2091
山縣'Finite-size effects in quasi-two-dimensional Ising model'Physica A205(1994)665
田口'Numerical Modeling of Vibrated Beds'Int.J.Mod.Phys.B7(1993)1839
田口'Turbulent flow in vibrated bed of powder:New target to investigate turbulent flow'
Fractals 1(1993)1080
尾関・西森'Phase Diagram of Gauge Glasses'J.Phys.A26(1993)3399
尾関'Replica Boundary Condition Applied to Random Spin Systems'J.Phys.Soc.Jpn.
62(1993)2641

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

相転移の計算機実験は主にモンテカルロ法による。特に二つの相の間にできる界面のエネルギー計算を行なう。
この計算は通常のモンテカルロ法より数倍以上の計算時間を必要とするが、界面を研究することの利点はある。例えば、相転移を示す物理模型のうちスピン変数が離散的で多成分であるような古典系、正方格子4状態クロック模型は、少し拡張すると相の数と相転移の数が増える。
5状態以上は分かっていないが、おそらく相の数も増加し、違う種類の相転移も現れる。界面自由エネルギーの数値計算はこのような未知の系の相転移点を調べるときに簡単で都合がよい。貴研究所の田村義保助教授は長い間この協同研究に携わってこられた必要不可欠な人である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

井上 敬

東京工業大学大学院

尾関 之康

東京工業大学

加園 克巳

東京慈恵会医科大学

田口 善弘

中央大学

田村 義保

統計数理研究所

羽室 大介

東京工業大学大学院

山縣 敦

日本女子大学