平成101998)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

10−共研−79

専門分類

7

研究課題名

東洋医学の臨床評価法

フリガナ

代表者氏名

ツタニ キイチロウ

津谷 喜一郎

ローマ字

所属機関

東京医科歯科大学

所属部局

難治疾患研究所

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

漢方薬や鍼灸などのいわゆる「東洋医学」は数千年の歴史をもち現在でもなお広く用いられている。その使用の妥当性は基本的には歴史的に蓄積された情報を基にしているが、近代の保健サービスの中でそれが用いられる場合、保健行政から臨床における意志決定までの種々のレベルで「無作為比較試験」を代表とする近代的評価法などとどう適応させるかが問題となる。本研究では、近代的評価法の東洋医学の分野への導入の歴史的プロセス、現状、その問題点、さらに解決法について調査研究する。


第5年度の活動として、基本的な研究デザインやエンドポイントの論議と共に、研究結果を日常の現場にどう適応するかの議論が開始された。 Evidence-based Medicine(EBM)は臨床家にとっては通常、(1)疑問の定式化、(2)情報の収集、(3)批判的吟味、(4)患者への適応、の4つのステップを取る。このうち(4)の患者への適応、は統計学ではあまり関心がはらわれなかった分野である。
例えば、鍼が腰痛に有効というRCTがあった時、その情報を使うのは誰であろうか?鍼を日本の保険制度の中に取りこむかどうかの意思決定をする、行政関係者には使えるであろう。しかしすでに日々腰痛の患者を診ている鍼灸師にとって欲しい情報は、患者の状態や体質に合わせて、どのツボに、どのくらい深く、どの程度の時間、刺したらよいのか、刺しっぱなしか手や電気で刺激か、刺激するとしたらどの程度か、などである。つまり彼等にとって、(1)の疑問の定式化、はより細分化されたものである。一方このことを知ると、RCTをデザインするときにどういう介入を設定するのか、またコントロールは何がよいのかという議論がより臨床に役立つclinically relevant なものになる。
こうした議論と同時に、東洋医学において統計学を正しく使うための啓発活動が、本年も続けてなされた。「統計の手引き」の作成のプロセスには本共同研究会のメンバーの関与が大きい。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

津谷喜一郎, 他. 第1度熱傷に対する外用剤治験のお灸を用いた評価法. 臨床薬理、1998;29: 145-146.
七堂利幸. サルにも分かる??生物統計学 (2)(3)(4). 医道の日本 1998年6,7,8月号.
矢野 忠, 川喜田健司, 形井秀一. 全日本鍼灸学会の学術・研究・編集の将来について. 全日本鍼灸学会雑誌 1998;48(4): 402-418.
津谷喜一郎. 中西医結合におけるエンドポイントと研究デザイン‐お血を例として‐. 中西医結合・動脈硬化症・血栓症・一次予防. In; 津島基夫、他、編. 第3回中西医結合・動脈硬化症・血栓症・一次予防国際シンポジウム組織委員会, 1998: 82-87.
七堂利幸. 第47回全日本鍼灸学会・「統計の手引き」作成のためのワークショップ. 企画司会. 1998.6.11, 岐阜. 全日本鍼灸学会雑誌 1998; 48(3): 277-278.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

<研究計画> 1)漢方薬・鍼灸の各分野における、近代的評価法を用いた文献の収集とデータベースづくり 2)臨床試験論文の質評価のためのクライテリアの収集と分析 3)近代以降の日本における鍼灸に関する論争の経時的分析、いわゆる鍼に関する推計学論争に関して収集された文献にもとづきそのリストづくりと解析 4)研究プロジェクトの調整のための研究者間の打ち合わせと討論 <統計数理研究所との共同研究実施の必要性> 本研究は、臨床薬理学者、東洋医学の臨床家、教育者を中心に、東洋医学における実際のニーズにもとづいて発案されたものであるが、対象領域が統計学を用いたものであるため、この分野の基本的な資料を保有し、また経験と実績を持つ専門家との共同作業が必須である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川喜田 健司

明治鍼灸大学

佐藤 俊哉

統計数理研究所

七堂 利幸

大素堂

西條 一止

筑波技術短期大学

藤抜 龍治

浅ノ川鍼灸院

矢澤 一博

?Sマグレインサカムラ商事