平成172005)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

17−共研−2060

専門分類

8

研究課題名

犯罪統計データのコウホート分析

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

Nakamura Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

我が国は,世界の先進諸国の中では例を見ない,犯罪の少ない安全な国といわれてきた。しかしながら,全国刑法犯の認知件数は平成8年から7年連続して戦後最多を更新するなど,近年犯罪情勢は悪化の一途をたどっている。一般に,人間のライフサイクルの中で犯罪に陥る危険度は青少年期に最も高く,加齢とともに減少していくといわれているが,近年の高齢者犯罪は,高齢者人口の増加を上回る勢いで激増している。また,幼少期に戦争を経験した世代や出生人口の多い世代は,他の世代に比べて犯罪に陥る危険度が高いとの研究結果もあり,対策を十分に検討しておく必要がある。
そこで,本研究においては,戦後の日本の犯罪統計をコウホート分析し,年齢,世代及び時代の各要因について検討を加えることにより,将来,平和で安全な社会を築くために有効な対策について検討することを目的とする。
今年度においては,平成15年度及び16年度に統計数理研究所共同研究で実施した受刑者率のコウホート分析を継続発展させ,昭和27年以降の50年間における刑法犯検挙者率について,殺人,強盗,窃盗,傷害などの主要な罪種別にコウホート分析を行い,年齢・時代およびコウホート効果を分離することによって,犯罪の変化の構造について明らかにした。
その結果,判明した事項は次のとおりである。
 1.男子の世代効果
(1) 昭和15年を中心とする10年幅に出生した世代で最も高く,ちょうど「非行世代」(幼少期に大戦を経験した影響で,Wilkinsが他の世代より非行者率が高いと唱えた世代)に合致する。
(2)昭和23年前後出生の団塊世代及び昭和47 年前後出生の団塊ジュニア世代の犯罪者率はともに平均的水準にあり,CS仮説(犯罪者率の増減は,その世代の出生人口母数の大小に影響されるとするEastelinの仮説)は該当しない。
2. 女子の世代効果
(1) 昭和10年を中心とする20年幅に出生した世代で最も高く,概ね「非行世代」に合致する。
(2) 団塊世代及び団塊ジュニア世代はともに低水準にあることから,CS仮説は該当しない。
3.男子の罪名別世代効果のピーク
(1) 10罪名(刑法犯,殺人,強盗,窃盗,詐欺,恐喝,傷害,暴行,強姦,放火)は,昭和15年を中心とする「非行世代」で最も高い。
(2) 11罪名(刑法犯,殺人,強盗,窃盗,詐欺,恐喝,傷害,暴行,強姦,強制猥褻,放火)で,検挙者率と新受刑者率の世代効果のピークが一致する。
4.女子の罪名別世代効果のピーク
(1) 刑法犯,殺人,窃盗,詐欺では,昭和10〜15年を中心とする「非行世代」で最も高い。
(2) 横領,恐喝,傷害,暴行では,昭和50年以降に生まれた「新世代」で最も高い。
(3)新受刑者率と検挙者率では,比較可能な4罪名(刑法犯,殺人,窃盗,詐欺)全てで,世代効果のピークはおおむね「非行世代」と一致する。
 今後は,未成年による非行検挙者率の特質について,詳細な分析を行っていきたい。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1. 市川 守,中村 隆(2005). 犯罪検挙者率のコウホート分析, 犯罪心理学研究 第43巻特別号. (日本犯罪心理学会,北海道札幌市:北海道大学,2005/8/20)
2. 市川 守, 中村 隆(2004). 受刑者率のコウホート分析(II), 犯罪心理学研究第42巻特別号,78-79. (日本犯罪心理学会, 東京都世田谷区:昭和女子大学, 2004/9/5)
3. 市川 守, 中村 隆(2003). 受刑者率のコウホート分析, 犯罪心理学研究第41巻特別号,18-19. (日本犯罪心理学会, 佐賀県神埼町:西九州大学, 2003/9/6)
4. 市川 守, 中村 隆(1992). 犯罪・非行者率に及ぼす時代・年齢・コウホート効果の分析(2), 犯罪心理学研究第30巻特別号, 12-13. (日本犯罪心理学会, 東京都文京区:東洋大学, 1992/9/12)
5. 市川 守, 中村 隆(1988). 犯罪・非行者率に及ぼす年齢・時代・コウホート効果の分析, 犯罪心理学研究, 26(2), 12-31.
6. 市川 守, 中村 隆(1988). 犯罪・非行者率に及ぼす年齢・時代・コウホート効果の分析,犯罪心理学研究第26巻特別号, 12-13. (日本犯罪心理学会, 東京都世田谷区:昭和女子大学, 1988/9/12)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催はありませんでした。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

市川 守

釧路少年鑑別所