平成272015)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

27−共研−2040

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

多文化社会における社会調査に関する考察

フリガナ

代表者氏名

フジタ タイスケ

藤田 泰昌

ローマ字

Fujita Taisuke

所属機関

長崎大学

所属部局

経済学部

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

37千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

社会調査で把握したいのは回答者の心だが、調査で実際に得られるのは調査の質問という刺激に対する回答者からの反応であって、回答者の心そのものではない(吉野2001他)。たとえば面接調査で得られるのは、調査員の質問という刺激に対する反応である。それゆえ、回答者からの実際の反応と回答者の心との間には乖離があると考えられる。
本研究は、このような回答者からの反応と回答者の心との乖離について、多言語社会での調査における言語の問題からアプローチする。多言語社会では、回答者と調査員との間で主要言語が不一致の場合が必然的に多くなるため、主要言語の一致/不一致によって、調査員からの質問という刺激が異なることになる。こうした言語の一致/不一致によって、回答者の回答傾向が異なるかどうか、異なるとすればなぜかを探った。
分析対象データは、統計数理研究所の吉野諒三教授が主導するプロジェクト「アジア・太平洋価値観国際比較調査(APVS)」のデータであり、多言語社会であるシンガポールを主な分析対象とした。また分析対象項目は、中間回答傾向や自己開示性の程度の違いを把握しやすいものとした。
 分析によって、まず言語一致/不一致による回答傾向の違いは、多くの質問項目において有意に大きいことが明らかにした。では、こうした回答傾向の違いの原因は何か。第1に、性別、年齢、学歴といった属性要因では適切に説明できないことが分かった。そして第2に、言語不一致の調査員に対応しにくい回答者層は、言語一致/不一致で回答傾向が異なる可能性を明らかにした。具体的には、学歴が低い層や年齢が高い層では、言語不一致の影響が大きいのである。すなわち、「属性でコントロールしさえすれば言語一致/不一致の回答への影響は無視できる問題だ」とは考えられず、人々の回答パターンを計量的に分析する際には、この多言語の影響を慎重に考慮することが求められることが示唆された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

藤田泰昌「言語の問題はどのような質問項目への回答に影響を与えるか:多言語社会での社会調査に関する一考察」日本行動計量学会大会2015年9月2日

Taisuke Fujita, Examining a Methodological Problem of Social Surveys in Multilingual Societies: Response Patterns and the Language Gap between Respondents and Interviewers, 13th East Asian Sociologists Network Conference, Yokohama, Japan.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

とくになし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関