昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−25

専門分類

3

研究課題名

正常者,分裂病とうつ病患者の脳波解析とパタン識別

フリガナ

代表者氏名

タカハシ カズアキ

高橋 和明

ローマ字

所属機関

国立精神・神経センター

所属部局

精神保健研究所・精神生理部

職  名

室長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ヒトの脳波(脳の電気的ゆらぎ活動現象)に自己回帰解析,要素波(δ,σ,αやβ波)解析とマハラノビス距離その他によるパタン識別等を施す。そして,正常脳波,分裂病とうつ病等の患者の脳波から,正常および病的な動的高次活動特性と要素波のそれを解明する。患者では臨床症状との関係も究明する。そして,臨床医の主観的診断よりも遥かに確度の高い客観的診断規準を確立する。


自己回帰(AR)法による“要素波解析”を使用して,正常者と分裂病者の脳波解析を行った。AR法において最適次数は赤池のAIC統計量により決定したが,AIC統計量を使用して最適次数を決定しても,要素波解析により1次と2次の要素波にわけると,時によりこの“最適次数”においてもこのモデルが必ずしも適切でないケースが生ずる。この時このモデルの最適次数をどの様に決定すべきかを検討するため,モデルの不適切さの生ずる条件について,設定する最高次数とサンプリング間隔について統計的検討をおこなった。
(方法)
30例の正常者および10例の精神分裂病者の後頭部誘導における10秒間の自然導出脳波について,最高次数とサンプリング間隔の6つの組合せについて行った。(サンプリング間隔は,5,10,20MSEC,最高次数は,15と20次)
まずアナログデータレコーダーに記録された脳波記録をA/D変換器によりPC−9800にデジタル化しファイルにしたものを,更に大型計算機用にファイル変換して処理した。
(結果)
1.サンプリング間隔は短くなる程,モデルの不適切さの生ずる割合は少なくなる。
2.設定する最高次数を変えていくと,モデルの不適切さの生ずる割合は少なくなる。
3.サンプリング間隔と最高次数が同一の時は,精神分裂病者の方が正常者よりモデルの不適切さの生ずる割合が少ない。
しかし最適次数の処理については,今回適当な方法がみつからないため下記の学会発表では不適切なモデルの生ずるケースは除いて処理した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究発表
1.AR要素波解析による正常脳波の時間的変動
−青年期女子の徐波活動について−
第13回「性格,行動と脳波」研究会,金沢,62年7月
2.自己回帰法による慢性精神分裂病の脳波解析(第3報)
第17回日本脳波筋電図学会,京都,62年11月


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

正常者,分裂病とうつ病の患者の頭皮上脳波のペン書と磁気記録の同時記録で,後者を再生AD変換し,脳波の離散時計列を求める。正常者では,閉眼安静時,閉眼暗算作業時,開眼安静時等の種々の覺醒度の脳波時系列を求める。これらの時系列に赤池情報量規準AICや最終予測誤差FPEを用いる自己回帰解析と要素波解析を施し,種々の覚醒度における「動的高次活動特性」とこれを構成する非週性の1次と周期性の2次(δ,σ,αやβ波)の要素波の「動的活動特性」を定める。患者脳波時系列では,種々の臨床症状に対応するこれらを定める。そして現在の診断規準よりも確度は高く,しかも「あいまい度」の低い客観的診断規準を求める。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

赤池 弘次

統計数理研究所

大隅 昇

統計数理研究所

佐藤 謙助

生体情報研究所

田村 義保

統計数理研究所