平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−74

専門分類

7

研究課題名

情報量統計学を用いた種畜評価手法についての研究

フリガナ

代表者氏名

ワダ ヤスヒコ

和田 康彦

ローマ字

所属機関

農林水産省畜産試験場

所属部局

育種部

職  名

主任研究官

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

種雄牛や繁殖雌牛の遺伝的な能力を評価する統計手法としてBLUP法が広く用いられている。しかし,現実に評価をしようとする場合にはわが国の乳用牛や肉用牛のフイールドデータに適したモデルをいかにして求めるかが問題となる。本研究の目的は情報量統計学の観点からBLUP法を見直して,モデル選択手法をも含めた新しい種畜評価の統計手法を開発することである。


昨年度の成果をもとに今年度はフイールドデータ処理用のプログラムを開発し,肉用牛と乳用牛のフイールドデータについて各々分析し検討した。
乳用牛においては12年間にわたる16万5千頭のデータを用いて,HendersonのMixed Modelの種々のモデルについてABICを算出し,それぞれのモデルの優劣について検討した。その結果,1.乳量では雄牛モデルが,乳脂率とSNF率では母方祖父牛モデルが優れていること,2.種雄牛グループの効果の有無や雄牛間の血縁行列の有無はABICには大きな影響を与えないこと,3.分散比をline searchしていくと反復法で求めた分散比よりもやや小さく推定されることが明らかとなった。
肉牛においては5年間の7288頭のデータを用いて乳用牛と同様の分析を実施した。その結果,1.屠殺時日齢区分の効果や技肉市場や肥育県の効果の有無がABICに大きな影響を与えること,2.種雄牛グループの効果の有無や雄牛間血縁行列の有無はABICとは大きな影響を与えないこと,が明らかとなった。
また,個体モデルでABICを計算するプログラムを開発したが実際のフイールドデータに適用するには計算時間がかかりすぎることが明らかとなった。そこで,種々の計算手法をシミュレーションにより比較検討した結果,Linked Vector法,減速ガウス・ザイデル法,Block Gauss法を組み合わせることによりスーパーコンピュータ上で10万頭程度の個体モデルにおけるABICを算出できるアルゴリズムを開発した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.アジア・オセアニア国際育種学会後6回大会にて“A New Model Selection Method of Mixed Linear Models with Akaike’s Theory in Sire Evaluation”という題で発表(1989.8)
2.第83回日本畜産学会大会で「乳牛の全国規模の種雄牛評価におけるモデル選択」という題で発表(1990.3)
3.J.Dairy Sci.誌に“Selecting Statistical Models with Information Statistics”という題で投稿中。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

昨年度(63−共研−80)に引続き家畜育種分野で広く使用されている各種の種畜評価のためのモデルをベイズモデルとして見直し,ABICなどを求める式の導出作業を行なう。これと平行して分析のためのプログラムを開発し,フイールドデータを念頭においたシミュレーションを実施して情報量統計学を用いた場合の有効性を検討する。さらに,実際のフイールドデータに今回開発した手法を適用して,わが国の乳用牛および肉用牛における種雄牛および繁殖雌牛の遺伝的な評価法について検討する。情報量統計学は統計数理研究所において創始された数理統計学の分野であり,この分野では統計数理研究所が世界で最も盛んに研究が行なわれている研究機関のひとつである。そして,情報量統計学は旧来の種畜の遺伝的な能力の評価手法における欠点を克服するために必須の統計技術であり,統計数理研究所との共同研究をする意義は大きい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

柏木 宣久

統計数理研究所