平成31991)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

3−共研−85

専門分類

9

研究課題名

環境データへの多変量解析モデル適用における理論的検討とその応用

フリガナ

代表者氏名

ニッタ ヒロシ

新田 裕史

ローマ字

所属機関

国立環境研究所

所属部局

地域環境研究グループ

職  名

主任研究員

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

種々の環境汚染物質の濃度がさまざまな計測手法を用いて測定されている。本研究では,環境データの特殊性と観測値間の相関関係を考慮した分析の方法について理論的に検討し,その結果に基づいて実データの解析を行う。


大気汚染物質の各種発生源と大気中の汚染物質濃度との関連性を解析することは環境科学の重要な課題である。通常、この解析には二つのアプローチがある。ひとつは、発生源における排出量に基づいて大気拡散モデルによって、環境中のある地点での汚染物質濃度を予測する、いわゆるソースモデルと、環境中のある測定点で得られる汚染物質、特に粒子状物質の持つ多次元情報すなわち各種の物理化学的性状に基づいて、その発生源の特性を推定する方法、いわゆるレセプターモデルである。本研究では粒子状物質中の元素濃度を中心として検討を加えた。
粒子状物質に関するソース・レセプターモデルは以下のように記述できる。粒子状物質が発生源(ソース)から測定点(レセプター)に到達するまでの間に、粒子の変質による組成の変化がないものとすると、各測定点における粒子状物質の元素濃度は、Xj =Σαjkgk (1≦j≦p)と表される。ここでM,pはそれぞれ想定し得る発生源の数と想定される元素の数を表し、Xj ,αjk,gk は以下のものを表すとする。Xj:測定点で得られた空気中の元素jの体積濃度。αjk:k番目の発生源由来の粒子状物質における元素jの質量濃度。ある発生源の各元素の質量濃度の組を、その発生源の元素組成プロファイルと呼ばれる。gk:空気中の、発生源k由来の粒子状物質の体積濃度。発生源寄与とよばれる。
大気汚染の防止対策上は発生源寄与の大きさを推定することが最も重要な課題となる。この発生源寄与推定のためにこれまでいくつかのモデルが提案されてきた。そのひとつは、Xjとαjkを与えることにより重回帰分析的にgkを推定する方法でCMB(Chemical Mass Balance)法と呼ばれているものである。この方法ではαjk、すなわち発生源のプロファイルを正確に知る必要があるために適用上の難点がある。一方、因子分析モデルはXjの相関構造に基づいて、αjkとgkの推定を行うものである。この因子分析モデルについてはこれまで多くの適用例があるが、αjkの誤差構造に関する評価がほとんど行われていないなど不十分な点が多かった。本研究では、因子分析モデルの修正モデルを提案し、理論的な検討を行うとともに、実測データに適用して発生源寄与の推定を試みた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

市川雅教 他,居住環境中の粒子状物質の発生源寄与率の推定,日本統計学会第60回大会、発表予定

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

大気環境科学の分野で,従来から汚染発生源の同定とその寄与割合の推定に「レセプターモデル」が用いられている。これらは,基本的には多変量解析モデルであるが,それを用いた推定結果の誤差の評価等については,十分な検討が行なわれていない。環境データは複雑な構造をもっており,それらの解析には,ブートストラップ法などが有効であると考えられる。統計数理研究所は,それらの第一線の研究者を擁し,かつ実際にそれらの手法を実行するための計算機資源も豊富であることから,共同研究により多くの成果が期待できる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

市川 雅教

東京外国語大学

小西 貞則

九州大学

佐藤 学

広島大学