平成152003)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

15−共研−1007

専門分類

3

研究課題名

計量ファイナンスにおける離散モデリングとその応用

フリガナ

代表者氏名

カワサキ ヨシノリ

川崎 能典

ローマ字

Kawasaki Yoshinori

所属機関

統計数理研究所

所属部局

予測制御研究系

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

金融資産の価格変動をモデル化するにあたっては、しばしば連続時間の確率微分方程式が利用され
る。しかしながらこれは近似であり、実際にはイベント(取引)の発生という観点からも、価格変動と
いう観点からも金融資産の変動は離散的な現象である。本研究では、株式市場のザラ場データを元に、
取引の集中が価格変動にもたらす影響を織り込んだモデルを構築し、それをオプションの価格付けに応
用する可能性を探ることを目的とする。
 本年度はまず、自己回帰型条件付きデュレーションとその対数変換版を推定することから着手した。価
格変動のモデルは離散値をとるものとしてモデル化するが、価格の上昇確率(のロジット変換)が自己の
履歴に依存するという形で定式化を行った。厳密には、例えば株価の変動は一定の刻み値の整数倍でしか
変動しないので、多項分布が自然な候補であるが、今年度は研究計画の初年度ということもあり、ある一
定幅の上昇とそれ以外、というように、二項確率の変動をモデル化した。取引間隔のモデルとその上での
価格変動のモデルを推定し、シミュレーションによってオプションの価格を数値的に導き出す研究を行っ
た。また、高頻度取引データを利用したリスク管理の方法(VaR)に関する研究も行った。
 また、本研究課題の主旨は、連続時間過程による現象の近似に徹底的に細かな離散時間モデルで対案を
構成することにあるが、ジャンプ・ディフュージョン・モデルは連続時間モデルの側からの自然な拡張で
ある。この点に鑑み、離散観測に基づくジャンプ・ディフュージョン・モデルの推定法に関する研究を行
った。
 それ以外では、いわゆる環境格付けの研究を行った。近年、環境優良企業を選別しそれらに対する投資
信託を組むというエコファンドが注目を浴びているが、この環境優良度は財務指標の一種として取り扱う
ことが可能であり、こうした研究はファイナンスにおける統計モデリングの新潮流と言える。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表・セミナー等
森本孝之,「最小マルチンゲール測度の下でのオプション価格付け」,第20回応用経済時系列研究会・
研究報告会,統計数理研究所(東京,2003年6月21日)。
森本孝之,「取引データを利用した市場リスクの計測」,統計サマーセミナー2003,登別石水亭(登別市,
2003年7月30日)。
森本孝之,「Option pricing with high frequent data under the minimal martingale measure」,統計
数学セミナー,東京大学数理科学研究科(東京,2003年12月11日)。
森本孝之,「最小マルチンゲール測度の下での高頻度データを利用したオプション価格付け」,日本金融
証券計量工学学会第20回大会,学術総合センター一橋記念講堂(東京,2003年12月21日)。
森本孝之,「Estimating and forecasting instantaneous volatility through a duration model」,第11
回関西計量経済学研究会研究報告会,神戸大学アカデミア館(神戸市,2004年1月10日)。
森本孝之,「Estimating and forecasting instantaneous volatility through a duration model」,計量経
済講演会,名古屋大学文系総合会館(名古屋市,2004年3月11日)。
森本孝之,「Estimating and forecasting instantaneous volatility through a duration model:An
assessment based on VaR」,東京都立大学COEワークショップ,熱海後楽園ホテル(熱海市,2004
年3月28日)。
池田陽介・笛田薫,「日本企業に対する環境格付け手法の考察」,第20回応用経済時系列研究会・研究
報告会,統計数理研究所(東京,2003年6月21日)。
清水泰隆,「ジャンプ型拡散過程の推定問題について」,統計サマーセミナー2003,登別石水亭(登別市,
2003年7月31日)。
清水泰隆,「離散観測されるジャンプ型拡散過程のノンパラメトリック推定について」,共同研究会『ノ
ンパラメトリック・セミパラメトリック法を用いた統計解析理論とその学際的応用』,京都大学芝蘭会
館別館(京都市,2004年3月27日)。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

池田 陽介

岡山大学

笛田 薫

岡山大学

前川 功一

広島大学

森本 孝之

広島大学