平成61994)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

6−共研−11

専門分類

1

研究課題名

確率解析による確率過程の統計学の研究

フリガナ

代表者氏名

ヨシダ ナカヒロ

吉田 朋広

ローマ字

所属機関

東京大学

所属部局

大学院数理科学研究科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

確率過程の統計推測の理論で有力な解析手法となる確率解析、とくにMalliavin解析による、高次漸近理論の研究を行う。この研究はまだ始まったばかりで、確率論と統計学の両面からの研究を行う。


確率変数の分布の漸近展開は,中心極限定理による正規近似の改善であり,統計学で,理論上のみならず応用上も重要である.独立観測の場合の分布の漸近展開は非常によく研究されており,分布の近似,高次漸近有効性の理論,統計量の変換の問題など多くの応用がなされた.近年確率過程,とくにセミマルチンゲールの統計理論が研究されるようになってきた.経済モデル,生存時間のモデルなどの応用があるが,そこに現れる統計量の漸近展開を調べるとき,マルチンゲールにたいする中心極限定理が重要な役割を演じた.その近似の改善については正規分布への収束速度に関していくらかの結果があったが,漸近展開については満足できる結果は知られていなかった.しかし,この問題の解決について一つの可能性が見つかった.
最近確率論で盛んに研究されているマリアヴァン解析は,(無限次元)確率空間上の関数解析学であるが,確率空間上の汎関数の分布の滑らかさを理論的に捉えるのに有効であることが知られている.とくにセミマルチンゲールにたいする有効性が知られている.漸近展開の問題では,これは伝統的によく知られていることだが基礎にある確率変数の分布の滑らかさが,分布の展開の形式に本質的に影響するので,分布の滑らかさをいかに捉えるかが問題となる.独立観測の場合にはクラーメル条件が多くの場合役にたったが,我々のテーマであるセミマルチンゲールに対してはマリアヴァン共分散の非退化性が代わりになる.この方針のもとで連続マルチンゲールに対する漸近展開が証明された.


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Yoshida, N.: Malliavin calculus and asymptotic expasion for martingales. Research Memorandum 504. The Institute of Statistical Mathematics. (1994)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

確率課程の統計的推測の研究はその重要性にも関わらず未知の部分が多い。とくに、2次以上の漸近有効性の結果はほとんど知られていない。確率解析とくにマリアヴァン解析が高次漸近理論に応用できることが最近知られるようになってきたが、確率論のこの分野の研究者と協力し、さらに理論的な研究を行う。
また、その手法は計量経済学への応用もあることがわかったが、このような確率モデルを利用する関連分野への応用も研究する。混合型確率変数の分布の漸近展開などの伝統的な統計学的問題にも新しいアプローチが与えられ、縮小型統計量の分布の研究に役立つことも最近わかってきたが、このような一般化も研究する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

植村 英明

愛知教育大学

尾形 良彦

統計数理研究所

茂野 洋志

     

杉田 洋

九州大学