平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2083

分野分類

統計数理研究所内分野分類

j

主要研究分野分類

7

研究課題名

津波・風害被害リスク軽減のための屋敷林管理に関する研究

フリガナ

代表者氏名

コノシマ マサシ

木島 真志

ローマ字

Konoshima Masashi

所属機関

琉球大学

所属部局

農学部

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

144千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 本研究では、沖縄県において歴史的に、防風や防砂・防火などを目的として活用・管理されてきたフクギ(Garcinia subelliptica)の屋敷林を対象に、樹木や屋敷林の構造と風および津波に対する抵抗力の関係を明らかにし、その評価結果をもとに、自然災害被害リスク軽減のための最適な立木空間配置、密度を探索することである。
 研究の対象地として、沖縄県本部町備瀬にある部落の海岸側に位置する一軒のフクギ屋敷林を選択した。立木位置を明らかにするために、コンパス測量を行ない図面におこした。さらに、胸高直径5cm以上のものについて樹高と胸高直径を測り、磁気を利用した3次元位置測定装置で、樹木の3次元データを収集した。このシステムはソースとなる磁界発生源、センサーとなる磁力計測部、さらにそれらを制御するコントロールユニットで構成されていて、磁界を発生させ、2.5mの範囲の中で、ペン型の計測部で木の表面をなぞっていく。重力方向、北の向きを計測部し、木の傾きなどの条件を明らかにした。また、今回収集したデータのうち平均的な胸高直径のデータを用いて津波に対するフクギの抵抗係数(C_(d-all))を求めた。抵抗係数は流体力学の分野で用いられ、物体の抵抗力と摩擦力を定量化する式である。また、様々な林帯幅を想定し、津波に対する抵抗力を評価・比較した。
 今回対象とした、海側の一軒の家を囲むフクギは海側辺(西側辺)26本、北側辺41本、東側辺18本、南側辺28本で合計113本であった。田中・佐々木(2005)らの研究では6種類の樹種についてC_(d-all)値を計算している。本研究におけるフクギのC_(d-all)値は、田中・佐々木(2005)らのココヤシに近い値をとるものの、ココヤシに比べてフクギは津波浸水深が高くなっても津波に対する抵抗力が低くならないことを示唆した。田中・佐々木(2005)らの研究によるココヤシのC_(d-all)値は、彼らの対象とした樹種の中でも2番目に低い値であった。しかし、本研究ではフクギの地上部分のみからC_(d-all)値を算出しているため、フクギの特徴的な部分である地下部の根の影響が考慮されていない。今後さらに正確な抵抗力を計測するためにはフクギの複雑な根の構造を考慮する必要がある。これに対しては近年、森林管理においても導入が始められた3次元位置測定装置を用いることで、より詳細な樹木の形状のデータ、根系システムのデータを集められる可能性があり、このようなデータの収集と蓄積は今後のフクギ林の管理、活用をしていく上での重要な資料につながると考えられる。林帯幅については、一般的に幅が大きいほど津波に対する抵抗力は大きくなると言われているが本研究のシミュレーションによりそれが確認出来た。しかし、屋敷林のように望ましい林帯幅の確保が難しい場合を考えると、林地の構成(立木密度や樹種の構成など)により機能を高めることを検討する必要がある。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

特になし

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

特になし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

加茂 憲一

札幌医科大学

服部 浩之

鹿児島大学大学院 連合農学研究科 生物生産学専攻

バム ラザフィンラベ

琉球大学

吉本 敦

統計数理研究所