平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−42

専門分類

5

研究課題名

胸部X線CTによる肺内病変の定性的・定量的自動診断法の開発

フリガナ

代表者氏名

クノ ケンシ

久野 健志

ローマ字

所属機関

京都大学

所属部局

胸部疾患研究所

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

最近、胸部X線CTによる肺内病変の診断に対して、CT値の平均値や標準偏差を求め、定量的に診断しようという動きがあるが、病態の把握に必要な病巣の空間配置様式の評価はなされておらず、またこれに必要な読影の自動化は未開発の分野である。
私共はこれらの問題を解決し、胸部CTによる肺疾患の病態の定量的自動診断法を確立したい。


前回の共同研究に引き続き胸部CTにおける肺野領域の濃度分布について研究を行った。これまで上肺野、中肺野、下肺野を代表する3画像について解析を行ってきたが、今回1cm間隔で撮影されたすべての画像について解析を行った。画像数が増えることにより病的変化をより正確に捉えられるようになることが期待された。従来よりの3画像の解析結果との比較では両者間にきわめて高い相関を示し、3画像の結果が全体の変化をよく代表することが示された。
従来より慢性肺気腫患者における病変領域に相当するとされている一定レベル(−990HU)以下の濃度を持つ領域の大きさ−個数の関係が自己相似性を示していることを報告してきた。今回はさらに各対象例においてそのレベル以下の領域が全体の15%、30%、45%、60%を占めるように設定したThresholdにおいてその大きさ−個数関係を解析した。各Thresholdにおいてすべての例で高い自己相似性を示した。また、回帰直線の傾では正常群と疾患群との差は認められなかった。このことは肺内病変の進行が元来フラクタル性を持つ気管、血管等の基本構築に強く規定されているため、正常例でも疾患例においても同様のX線吸収度分布が得られたものと考えられた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Sakai,N.,Mishima,M.,Nishimura,K.,Itoh,H.,Kuno,K., An automated method to assess the distribution of low attenuation areas on chest CT scans in chronic pulmonary emphysema patients.,Chest in press 1994

酒井直樹、胸部CTにおける肺野の濃度分布のフラクタル性に関する検討、日本胸部疾患学会総会、平成6年4月27日発表予定

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

昨年度までの共同研究において、肺野領域を胸部全体のX線CT像より自動的に抽出する方法は確立し、また肺気腫病変に関しては、病変の2次元的配置パターンの統計的解析により、ある程度の定量評価が可能となった。現在、手術にて摘出された肺の進展固定標本を用い軟X線による撮像に成功している。
今年度は、同一標本に対し得られた病理組織像、軟X線像、CT像という画面解像度が異なる3つの画像に関し、フラクタル解析等の手法を用い、ミクロな病理変化からマクロなX線低吸収領域形成までを連続的、統合的に解析を行いたい。病理組織変化と一般臨床検査で得られる画像とが統計数理的解析により有機的に結び付けられれば、病態の的確な把握、予後判断に有用と考えられる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川上 賢三

京都大学

酒井 直樹

京都大学大学院

杉浦 直治

京都大学大学院

田久保 康隆

京都大学大学院

種村 正美

統計数理研究所

平井 豊博

京都大学大学院

三嶋 理晃

京都大学