平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−88

専門分類

7

研究課題名

「Quality of Life 心と身体の充実」に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ハセガワ モトハル

長谷川 元治

ローマ字

所属機関

東邦大学

所属部局

医学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

高令化社会において精神的、肉体的に健康を維持し、年令を重ねていくこと、つまり「Quality of Life 心と身体の充実」を確保することの意義は大きい。
そこで本研究は、長年積み重ねてきた、各種疾患通院患者データと健常者の検診データから病的老化と生理的老化の質的違いを分析、総合的老化特性を明らかにし、年令相当の精神と肉体維持し、病的老化の予防的な研究を行う。


「Quality of Life 心と身体の充実」の実現にむけ現代日本人における身体的特性の把握を目的に以下の分析を行った。対象は全国主要都市部居住者で年令20〜70代の男女77,792名(1976〜1979年)、74,313名(1982〜1985年)、188,700名(1988〜1991年)合計340,805名である。
分析した検査項目は血圧(最大、最小)、脈圧、心電図、眼底、血清脂質(総コレステロール、トリグリセライド)、尿(蛋白、糖)および無侵襲的動脈硬化検査のPWVで、検討した動脈硬化性疾患は高血圧、高脂血症、糖尿病である。
1.血圧は加令により増加し、男性は女性に比し高値を示した一方、脈圧は20〜40代まで減少以後増加した。
2.血圧、脈圧の増加に伴いPWV値は増加し、高血圧において動脈硬化の合併頻度が増した。
3.最大、最小血圧とも前期(1976〜1979)に比し、後期(1988〜1991)は有意な低値を示した。
4.臨床で問題となっている高血圧、高中性脂肪血症および糖尿病の合併(以下HHG)の頻度は加令により増加し、対照群に比し、PWVは高値、心電図および眼底異常は各々6.3、6.6倍の高頻度であった。HHGは動脈硬化性疾患発症の高リスクであることが示唆された。
5.血清脂質をみるとコレステロール、中性脂肪とも年代傾向、異常発生率で男女間で明らかな差を認め、女性で50代以降のコレステロールの増加、男性における30〜50代での中性脂肪の増加が特徴的変化であった。
6.PWVと血清脂質の関係ではコレステロール、トリグリセライドとも高値、トリグリセライドのみ高値、コレステロールのみ高値、ともに正常の順にPWVは高値となった。前期(1987〜1985)に比し、後期(1988〜1991)では両脂質とも低下を示した。
7.心電図のST・T異常は女性が男性を上回り、また異常の強い程PWVは増加した。
8.眼底異常は加令により増加しPWVも高値を示したが、男女で差はみられなかった。
以上、血圧、心電図、血清脂質異常発現頻度は男女で差を認めた。検査異常に強い程PWVも高値を示した。動脈硬化性疾患の合併はより検査異常も高い頻度をしめした。前期に比し後期で血圧、血清脂質は低下し治療の普及、環境および食生活の改善が示唆された。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・鈴木賢二 都市部住民検診における高血圧、高中性脂肪血症、糖尿病合併例の過去7年間発症率推移と変動要因の解析
第25回日本動脈硬化学会総会 93.5.21
・荒井一歩 疫学的対照群9年間('82〜'91)における血清脂質推移の統計学的考察(?) 第35回老年学会 93.9.22
・鈴木賢二 疫学的対照群14年間('77〜'91)における血圧推移の統計学的考察(?) 第35回老年学会 93.9.23
・高橋功 疫学的臨床検査所見における動脈硬化の合併(1)?血圧値毎、性別、年代別傾向? 第30回日本臨床生理学会 93.10.16
・鈴木賢二 疫学的臨床検査所見における動脈硬化の合併(2)?血清脂質(TC、TG)値毎、性別、年代別傾向?
第30回日本臨床生理学会 93.10.16
・煙草聡 疫学的臨床検査所見における動脈硬化の合併 ?眼底、心電図異常所見毎、PWV、性別、年代別傾向?
日本動脈硬化学会冬季大会 93.11.25

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

(財)動脈硬化予防研究会では年間約20万人に及ぶ循環器検診・栄養調査を実施している。また、1975年(約4万人)と1985年(3万5千人)の被検診者に対して発症追跡調査を実施している。これらの大量データと本学継続通院患者500名の生理機能から生化学まで26種118項目のデータを利用し次の研究を行う。
経年的な検診データと通院患者データ及び、栄養調査データに基づき、健康な状態から疾患に移行する要因の解明、健康度(年令相当の生理的老化度)を表現する方法の開発また、精神活動調査項目の設定も検討する。
これらの研究を実施するに当たっては、多変量解析法、時系列分析法など種々の統計手法応用は必須の条件である。しかし本学単独で本研究は不可能であり、統計数理研究所との共同研究により新たな予防医学システムの開発を行う。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

駒澤 勉

統計数理研究所

白井 厚治

東邦大学

鈴木 賢二

(財)日本労働文化協会

高田 浩江

(財)日本労働文化協会

高山 吉隆

東邦大学

森 誠

(財)日本労働文化協会

山口 百子

国立健康栄養研究所