昭和601985)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

60−共研−46

専門分類

8

研究課題名

著者推定の数理統計学的研究−日蓮の三大秘法禀承事の真偽判定−

フリガナ

代表者氏名

ムラカミ マサカツ

村上 征勝

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

領域統計研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は,これまで数量的なとり扱いがほとんどなされていない,著作の真偽判定や畜者の推定という,いわゆる“著者推定の問題”に対し,文体に関する数量的な情報を利用した数理統計学的解析法を確立し文献学,書誌学の研究に新領域を開拓することにある。具体的には,現下の文献学的レベルにおいて真偽未決とされているが,しかし日蓮の実践的な仏教思想を理解する上で極めて重要な文献である『三大秘法禀承事』の真偽判定問題をとりあげその結論導出を試みる。


この研究は過去数年間継続しておこなっている研究であるが,昭和60年度の共同研究として以下のことをおこなった。
1.解析に用いるために,昨年度までに作成した「昭和新修日蓮聖人遺文全集」に基づく約17万語のローマ字表記の言語データを漢字・かな表記に変換した。
2.「昭和新修日蓮聖人遺文全集」を解析のテキストとして用いるのは問題があるとの指摘に答えるため,「昭和定本日蓮聖人遺文」をテキストとしたローマ字表記および漢字かな表記データを作成した。
3.両テキストを用いて,主語・述語というような構文解析のためのデータの作成作業を進めた。
4.真偽判定にどのような情報が有効となるかを調べるために,クラスター分析,回帰分析等によって予備的な解析をおこなった。
5.上記の作業・解析を進める上で必要となった各種の計算機プログラムを開発した。
6.研究を進める上で不可欠である“計算機による日本文処理”を効率良くおこなうための方法を研究するため,NTT武蔵野電気通信研究所の言語処理研究グループ,および大阪府立大学の樺島忠夫教授との研究会を持った。
7.この研究に関連した内外の文献の収集を積極的におこなった。
以上のような型で共同研究を進めたことにより,最終目的である「三大秘法禀承事」の真偽判定に関する結論は導出できなかったものの,これまでになく大きな進展をみ


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文1.春日三正;「日蓮聖人遺文の国語学的研究−真偽未決御書に現われる助動詞語形の一断面−」
立正大学文学部論叢第81号(1985)
2.古瀬順一;「日蓮遺文」の資料としての評価と研究の動向
愛知教育大学研究報告第34輯(1985)
3.古瀬順一;日蓮遺文にみられる格助詞「の・が」について
国語国文学報第42集(1985)
発表1.村上征勝;「数理文献学の現状」
統計数理研究所・統計数理セミナー(1986)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

昭和55年に,『三大秘法禀承事』及び日蓮の著作17編,偽作8編の計26編の文献(約8万語)に基づく研究結果を発表した。しかしながら,解析に用いた文献の数が26編と少なかったこと,主語,述語等の構文に関する情報,及び論理の展開に関する情報が欠けていたこと,解析に用いた既存の統計手法の使用に問題がある等の反省に基づき,今回は解析すべき文献を24編追加するとともに,従来の文法的な情報の他に構文及び論理の展開方法に関する情報を加えて,これらの文体に関する多次元情報を利用した著者推定問題のための新しい数理統計学的手法の開発を試みる。その後開発した手法を用いて『三大秘法禀承事』をも含めた日蓮に関する5編の真偽未決の文献に関し,その真偽判定をおこなう。
ところで,この研究はその性質上,仏教学,言語学,心理学等の専門知識が不可欠であり,したがって統計学の研究者を中心に,これらの分野の研究者と協力して研究を進める必要がある。また,これまでの経験から単年度で研究を終了することは困難と予想され,一応3年で成果を出すことを目標としている。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 瑞叡

立正大学

春日 正三

立正大学

古瀬 順一

群馬大学

中村 隆

統計数理研究所

藤本 煕

明星大学

安本 美典

産能大学

山元 周行