平成192007)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

19−共研−2025

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

東アジアにおける価値観国際比較の統計科学的研究

フリガナ

代表者氏名

ジェン ユエジェン

鄭 躍軍

ローマ字

ZHENG Yuejun

所属機関

総合地球環境学研究所

所属部局

研究部

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

100千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

この共同利用研究では、東アジア諸国・地域における価値観・規範などの共通性と特異性を、科学的に収集した「データ」を中心に明らかにすることを試みた。H13年〜H17年に東アジア諸国・地域(日本、中国本土、台湾、香港、シンガポール、韓国)で実施した価値観国際比較調査データを基に、国際比較調査の比較可能性と質問の等価性について検討すると同時に、伝統的道徳観、家族・婚姻観、男女観に焦点を当て、儒教思想に関連する価値観の大局的考察を行い、東アジア諸国の価値観の特徴を、さまざまな視点から比較分析した。具体的には、
1) 調査方法と質問内容の等価性に関する検討
2) 比較可能性の検証
3) 調査データの解析方法の比較
4) 価値観調査データの2次分析
の4つの側面に焦点を置き、国際比較研究の視点から東アジア価値観の全体像の比較分析を遂行した。特に、東アジア諸国の相対的な位置づけ、各社会の相互関連を解明することに検討を重ねた。先行研究の成果を踏まえ、方法論的研究と並行して、調査データに関する統計的解析を進め、様々な視点から調査データを分析し、儒教思想の根底となる価値観、伝統的道徳観に焦点を当て、回答者の社会的属性との関連性を明かにした。また、直接に関連がないと見られる質問項目についても慎重に検討することにより、価値観の構造を探った。
共同研究者がそれぞれの立場から提案を出し合い、積み重ねることにより、様々な視点から調査データに含まれる情報を抽出することを通して、学問の連携を実現し、新しい知見が生まれることを試みた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

当研究チームは、これまで国際比較研究の異なる側面から実証的研究を展開してきた。現在実施している研究プロジェクトの一部をここで挙げる。
鄭躍軍・金明哲・村上征勝(2007):データサイエンス入門, 勉誠出版, 229.
吉野諒三編(2007): 東アジア価値観国際比較 データの科学, 勉誠出版, 383.
鄭 躍軍(2007): 東アジアにおける環境意識と環境配慮行動との関連性分析, 第35回日本行動計量学会大会発表論文抄録集: 243-244.    
鄭 躍軍(2007): 規範観の国際比較−東アジアの法意識を中心に, 第35回日本行動計量学会大会発表論文抄録集: 293-294.
鄭 躍軍(2007): 意識国際比較の視点から見た東アジア環境協調可能性, 環境経済・政策学会2007年大会報告要旨集: 134-135.
鄭 躍軍(2007): 抽出の枠がない場合の個人標本抽出の新しい試み?東京都における意識調査を例として?; 統計数理55(2):311-326.
袰 岩晶・吉野諒三・鄭 躍軍(2007): 中国価値観調査回収データの再検討を通した「意識の国際比較調査」データの安定性について−文化多様体解析(CULMAN)の方法論的基礎に関する一考察−, 統計数理55(2): 285-310.
鄭 躍軍(2007): 家族、家庭・生活満足度の変化, 永瀬伸子編「家族・仕事・家計に関する国際比較−中国パネル調査(第3年度報告書)−」,114-123, お茶の水女子大学, 245pp.
鄭 躍軍(2007): 中国は科学技術, 韓国は経済, 日本は環境, 朝日新聞(政策面), 2007年6月8日.
金 明哲・村上征勝(2007):ランダムフォレスト法による文章の書き手の同定, 統計数理55(2):255-268.
村上征勝・浦部治一郎(2007):浮世絵における役者の顔の描画法に関する数量分析, 統計数理55(2):223-234.
吉野諒三(2007):「信頼」の文化多様体−アジア・太平洋地域の各地域共同体について−,日本行動計量学会第35回大会発表論文抄録集:285-288.
山岡和枝(2007): 米国における「生命観と文化」CATI調査報告,日本行動計量学会第35回大会発表論文抄録集:301-302.
林 文(2007): 宗教的な心について−アジアと日本の比較に向けて−, 日本行動計量学会第35回大会発表論文抄録集:291-292.
林 文(2007): 家族の死:悲嘆のケアワーク−患者療養中から死別後までの調査報告−.日本行動計量学会第35回大会発表論文抄録集:137-138.
鄭 躍軍(2008): 伝統的価値観の社会的変遷, 篠塚英子・永瀬伸子編「少子化とエコノミー −パネル調査で描く東アジア」, 作品社, 209-225.
鄭 躍軍(2008): 家族、家庭・生活満足度の時系列的変化, 永瀬伸子編「家族・仕事・家計に関する国際比較−中国パネル調査(第4年度報告書)−」, 101-108, お茶の水女子大学, 245pp.
吉野諒三(2008).「国民性」と環境問題−多様な価値観を受け入れる政策立案のために−,環境情報科学37(1):21-26.
Yamaoka K(2008): Social capital and health and well-being in East Asia: a population-based study,Social Science and Medicine,66:885-899.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

林 文

東洋英和女学院大学

村上 征勝

同志社大学

山岡 和枝

国立保健医療科学院

吉野 諒三

統計数理研究所