昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−30

専門分類

4

研究課題名

「社会階層と社会移動調査」を中心とした社会的地位指標の研究

フリガナ

代表者氏名

サカモト ヨシユキ

坂元 慶行

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

意識調査の今後の発展のためには,悪化する統計調査環境下でも実査可能で,かつ,多様化する社会状況に対応できる「個人の経済社会的地位指標」の検討・提案が重要な課題の一つである。
この研究の目的は,従来編集中の所内外の種々の調査データと「社会階層と社会移動調査」の最新のデータに基づき,社会階層の現況とそれをめぐる意識の実像を明らかにすることによって,上の課題に資すことである。


余暇開発センターは,1979年の「13カ国価値観調査」の結果に基づいて,中流意識は世界的傾向であると指摘している。しかし,昨年度CATDAPによってこのデータを分析してみたところ,「階層帰属意識」の規定要因は日本と外国とで大きく違うという知見を得た。すなわち,日本以外の12カ国においては,収入,職業,財産・耐久消費財の有無等の経済的・社会的な地位指標の効果が強いのに対して,日本だけが生活満足感や幸福感等の主観的な指標の効果が強く,収入の効果を上回っているのである。
今年度は,「13カ国価値観調査」で見られたこの現象が,1.他種の文脈の調査票を用いた調査でも認められるのか,2.認められるとすれば,いつ頃からかなどの点について所内外の種々の調査データに基づいて検討した。
まず,1955年から1985年まで,10年ごとに,4回実施されてきた「社会階層と社会移動全国調査」の分析から以下の結果を得た。
1.敗戦後10年しか経っていない1955年において既に「階層帰属意識は(客観的な指標というより)主観的な指標」という特徴が見られ,以後の調査でもこの事情に変りはない。
2.客観的な地位指標との関係はオイル・ショックを境に変化している。
つぎに,意識や態度の調査結果は調査方法,殊に質問法に強く依存する。そこで,時事問題,価値観,消費行動などを主題にした調査票による調査の結果を分析してみたが,「階層帰属意識」に対しては,「くらしむき」や「くらしむき満足度」などの経済心理的な要因の効果が他の経済・社会的な地位要因そのものより強い,という事実に変わりはなかった。
こうして,「階層帰属意識は主観的な指標」という特徴は,種々の調査に共通に見られるだけでなく,時間的にもかなり早い時期から認められたと考えられる。しかし,この特徴の含意の解明は今後の課題である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

分析結果の詳細は「『階層帰属意識』の実像」(『統計数理』第35巻第2号)に発表。
なお,この論文は「1985年社会階層と社会移動調査委員会」編『1985年社会階層と社会移動調査報告書』に転載の予定。また,その要約は『とみん広聴』(東京都情報連絡室1988年3月号)にも掲載。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

(研究内容)
これまでの研究によって,当研究所の「価値意識調査」,日本消費経済研の「消費者の意識と行動調査」,余暇センターの「13カ国価値観調査」等の編集と再分析を進めてきた。新年度は,昨年ようやくデータが完成したSSM調査委員会の「1985年全国調査」データの分析によって社会経済的地位と階層・階級意識との連関を明らかにするとともに,従来の研究成果を活用して,それらと消費感覚・行動との関連についても考察する。
(共同研究の必要性)
坂元,中村は,社会階層論についての直井の理論的援助を得て,データ解析を行うとともに,消費行動・消費感覚についての上村・武藤の援助を得て,総合的な分析を行う。また,必要な解析法の開発には石黒の協力を得る予定であり,データの編集・加工は坂元が担当する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

上村 淳三

日本経済研究センター

直井 優

大阪大学

中村 隆

統計数理研究所

武藤 博道

日本経済研究センター